所蔵品展「さかのぼり岐阜洋画史 大正・明治編」「ルドンコレクションから:黒との会話」「林武史 《石間》安藤基金コレクションから」「フォルム―やきものから」の作品を鑑賞して《Such Such Such》を体験するプログラムを行いました。
開催概要
開催日:2023年12月3日(日)
会場:岐阜県美術館 多目的ホール、展示室1
対象展示:「さかのぼり岐阜洋画史 大正・明治編」「ルドンコレクションから:黒との会話」「林武史 《石間》安藤基金コレクションから」「フォルム―やきものから」
対象作品:
・北蓮蔵《午の憩》1916年
・林武史《石間》2011年
・オディロン・ルドン《「夢のなかで」 Ⅷ. 幻視》1879年
・鯉江良二《土に還る》1971年
・天野裕夫《重厚円大蛙》1996年
参加人数:9人
内容
○オリエンテーション
多目的ホールに集合し、まずはオリエンテーションです。
アートツアーの流れと日比野克彦アートコミュニケーション作品《Such Such Such》について説明をしました。
「ナンヤローネ」をキーワードに作品鑑賞を楽しみます。
展示室での注意事項を確認したら、グループごとに自己紹介をしました。
一人ひとつコネクターボックスをもってツアーに出発です!
○展示室で作品鑑賞
展示室に移動し、まずは作品をじっくり鑑賞します。
今回は所蔵品展示の中から油彩、版画、工芸、彫刻作品と幅広いジャンルの作品をアートツアーの対象作品に選びました。
また、同日開催されていた「林武史《石間》体験会」もアートツアーの内容に組み込みました。
作品保護のため普段は触れることができませんが、今回は作品の上を歩いたり座ったりしながら身体を使って鑑賞をしてもらいました。参加者の皆さんは作品に乗ったときの不安定さや、触れた時の石の手触りや温度について、交流を深めていました。
オディロン・ルドン《「夢のなかで」 Ⅷ. 幻視》「眼球は浮いているようにも、壁にめり込んでいるようにもみえる。」「描かれている人物は慌てているようにもみえる。」「不思議なこの状況は日常で、当たり前に受け入れて落ち着いているんじゃない?」
《重厚円大蛙》「蛙の手が獣のよう。陸上に住んでいて、適応するためにこんな手になっているのかもしれない。」
《土に還る》「お墓のようにみえた。」「自然に還っていくのかな。未来につながる希望もあるのかも。」
○コネクターを選ぶ
「感じ」を言葉ではなく「もの」にたとえてみます。「もの」のことをコネクターと呼びます。作品をみたときの自分の気持ちに近いコネクターを選びます。
同じ作品をみてもそれぞれ選ぶコネクターが異なります。
「どうしてそのコネクターを選んだの?」と話をしてもらうと、「へえ!そんな考え方も面白い!」と作品を新たな視点で味わうことができます。
今回のコネクターは様々な質感の白い布や紙、黒や銀の生活用品、陶片やタイルを用意しました。
「《石間》に乗ったときに聞こえた、石同士が触れる音を表現するとしたら、和紙の中にあるこんな模様が近いかな。」
「《午の憩》のコネクターに爪切りを選びました。将棋を指す人、それを観戦する人、窓辺でおしゃべりをする人がいた。爪切りは空いた時間にやることなので、休憩時間を表しているように感じてこのコネクターを選びました。」
○スケッチをする
展示室から多目的ホールに戻ってきました。じっくり作品鑑賞をした後なので一度みんなで深呼吸。
作品をみたときに自分の感じたことをスケッチに表現します。
今回は《石間》のコネクターである白い布や紙をスケッチに使用しても良いことにしました。
自分の作品をみたときの気持ちを思い出すためのコネクターとして使う人や、スケッチの表現の素材として組み込む参加者もいました。
○スケッチをもとに交流
グループ内でどんなスケッチをしたか交流し、グループから代表でスケッチについて発表してもらいました。
「今日見た作品に共通して、不安定さのようなものを感じた。バラバラとした形を組み合わせて、スケッチで不安定さを伝えたかった。」
「これってナンヤローネ?と感じる作品がたくさんあったので、それを見ている自分の、なんだこれ!?という気持ちを表現してみました。」
アートツアーの後にもう一度作品を見てみると、どんな感じがするでしょうか?改めて作品鑑賞をするのも面白いですよ。とお声がけし、今回のアートツアーは終了しました。
参加者の声(アンケートから抜粋)
・普段できない体験(《石間》体験)ができたこと、新しい考えを持てたことがよかったです。
・自分の感じたことと他の人が感じたことが違っていて、話して共有したことで新しい視点で見ることができました。
スタッフの振り返り
・どんな来館者の方も過ごしやすいように、アートツアーの環境やスタッフの動きをより良いものにしていきたい。
・作品鑑賞では沢山対話があったが、自分の気持ちをスケッチで表現することに戸惑いがある人もいた。取り組みやすい声掛けなど、工夫していきたい。
・「《石間》体験会」のイベントを組み込んだアートツアーだったので、普段のアートツアーと異なる流れもあったが、サポーターさんが臨機応変に対応してくれて、スムーズに運営できた。