所蔵品展で対話型鑑賞〜Let’sおしゃべり鑑賞丸

「この舟のろう方式」による活動の記録を、「〜ながラー」の視点からふりかえり、アーカイブとして掲載します。
今回は「所蔵品展で対話型鑑賞〜Let'sおしゃべり鑑賞丸」企画の様子をお届けします。

【活動期間】2023年7月~12月

【メンバー】
2期:市川めぐみ、加納稔、高木尚子、中村佐和子、松本博之、松井真理子、和田朋子
4期:伊藤文子、王田夏野、鈴川敦子、戸部李果、佃雅子、山崎有里子

1、舟の再出航は突然に

「所蔵品展で対話型鑑賞〜Let'sおしゃべり鑑賞丸」(以下「おしゃべり鑑賞会」)は「~ながラー」1期による立ち上げ以来3年間、様々にかたちを変え、たくさんの「~ながラー」が乗組員として、入れ替わり立ち替わりしながら続いてきた舟です。

2023年7月某日、実践ゼミの後に、たまたま集まった2期メンバー3名のランチ会でのことでした。
A:「今年もおしゃべり鑑賞会したいよね。」
B:「おしゃべり鑑賞会楽しいよね~。定例のイベントに出来ないかな?」
C:「じゃあ掲示板でメンバーを募ってみようか。」

ということで、この瞬間に舟の再出航が決定。このあと掲示板でメンバーを募りました。
すると13名もの「~ながラー」が乗船を申し出てくれたのです!

このランチミーティングがなければ今年のおしゃべり鑑賞会は実現しなかったことを思うと、いやはや舟出航のタネはどこに落ちているかわかりません。やはり、ゼミ後のランチ会は大切であると感じました。

2、めざせ「おしゃべり鑑賞会」定期開催!! しかし困難は次々と…

対話型鑑賞会の楽しさをより多くの方に知ってほしいとの思いから、今回は定期的に鑑賞会を行うことにこだわりました。
まず8月に第1回ミーティングを実施。おしゃべり鑑賞会の定期的な開催に向け、まずは月2回の対話型鑑賞会を10月から3ヶ月間行ってみようということになりました。

しかし、準備を進めていくうちに、1日だけ開催のイベントとは違って、定期的な開催ならではのハードルがあることが判明しました。

まずは展示替えへの対応です。 定期的な開催のためには、その都度変化する展示内容に合わせた鑑賞会の準備が必要になります。しかし、担当作品決めやリハの日程調整など、展示替えの内容に迅速かつ柔軟に対処することが難しく、以前運営スタッフからいただいた「~ながラーの活動が義務にならないように。」というアドバイスが実感として理解できました。

また、長期にわたるイベントでは、スタッフを確保する難しさもありました。しかし、メンバー全員の対話型鑑賞会に向けての熱い思いが実を結び、結果として計6回の日程が決まりました。

「~ながラー」の活動の基本は「そこにいる人がすべて」です。困難にぶつかるたびにそのことを思い出し、そこにいるメンバーで最善を尽くそうという姿勢で臨むことが出来たのはよかったと思いました。

そのほか次々と山をこえ谷を越え、11、12月の2ヶ月で3日間、午前・午後の計6回の実施が決定しました。

3、よりよいおしゃべり鑑賞会をめざして

今まで対話型鑑賞会に参加したことのない来館者の方にも、参加していただきやすいように、開催日程を平日と週末、それぞれ午前・午後に組みました。
また、大人チーム、子どもチームに別れておしゃべりしやすい雰囲気作りも工夫しました。

さらに広報活動として、事前に館内にチラシを置いたりInstagramで参加者を募集するなど、おしゃべり鑑賞会の認知を広げることにも努めました。

他の「~ながラー」の力も借りながら、リハーサルをチームごとに何度も行いました。親子プログラムの経験のあるメンバーには、イベントを定期的に開催するためのヒントや子どもチームに対するアドバイスをいただきました。

運営スタッフにもリハーサルに毎回立ち会っていただき、ファシリテーターが初めてのメンバーも大変心強かったです。
こうした他の舟や運営チームのご協力があって、今回の計6回のおしゃべり鑑賞会が実現できたと感じています。

アートコミュニケーターズルームでのミーティング風景

4、おしゃべり鑑賞会、いよいよ本番!

鑑賞会風景1

多目的ホールで自己紹介、アイスブレイク、鑑賞の3つのお約束など、おしゃべり鑑賞会の概要と共に参加者にご案内しました。

アイスブレイクで参加者の気持ちをほぐします

鑑賞の3つのお約束をご案内しています

鑑賞会風景2 さかのぼり岐阜洋画史 大正・明治編

いよいよ展示室の作品の前で鑑賞会がスタート!作品ごとにファシリテーター、サポーター、タイムキーパーの役割を交代しながら鑑賞会を進めました。メンバーのチームワークが光りました。

展示室1a「さかのぼり岐阜洋画史 大正・明治編」での鑑賞会風景①

展示室1a「さかのぼり岐阜洋画史 大正・明治編」での鑑賞会風景②

鑑賞会風景3

広々とした空間で彫刻作品である林武史《石間》を対象にした鑑賞会は、しゃがんで近づいてみたり、ぐるっと作品をひと回りしたりと、鑑賞者の動きも絵画作品とは違ったものになりました。

展示室1b「林武史《石間》安藤基金コレクションから」での鑑賞会風景①

展示室1b「林武史《石間》安藤基金コレクションから」での鑑賞会風景②

鑑賞会風景4

ルドン作品で対話型鑑賞

展示室1c「ルドンコレクションから:黒との会話」での鑑賞会風景

5、アートコミュニケーターズルームでふりかえり

参加者にアンケートを記入してもらいながら、感想を語り合いました。

鑑賞会後に参加者と感想を語り合う様子

6、鑑賞会を終えて

・初回の事前応募は少なかったですが、メンバー全員の当日勧誘が実を結びいずれの回も2チームに分かれて実施することができました。

・4期メンバーにとっては初めてのイベント開催でしたが、成功体験や改善に向けた課題を実感でき、全体的によいイベントになりました。

・中学生から大学生、はたまた80代の方まで幅広い年代の方にご参加いただけました。異なる背景をもつ様々な年代の方が、作品を通して交流できる場所を提供できたことが嬉しいです。

・リピーターの参加者もいて、この対話型鑑賞の手法を使ったおしゃべり鑑賞会が確実に根付いていることを確信しました。

・6回目に初めて外国籍の方も参加されていました。国籍は異なっても、作品に感じた印象は同じ部分もたくさんありました。海外の方にも来てもらうにはどういう点に注目していけばよいのか、「〜ながラー」として考えていきたいです。

・鑑賞会を重ねて自分の課題や対策が見つかり、サポート担当の際も他のメンバーを見ながら新たな気づきがありました。

・鑑賞会当日さまざまな不測の事態がありましたが、臨機応変に対応することができました。今後も回数を重ねることで「~ながラー」の対応力が増し、来館者の満足度を高めることができるのではないかと感じました。

・反省点として、作品に近づきすぎる場面があったので上手に声がけをして、適正な距離感を保つようにすることも課題です。

・多様な参加者に臨機応変に対応するためファシリテーターは2作品用意し状況に応じ選ぶという意見と、参加者によって作品を選ぶと鑑賞の幅を狭める可能性もあるという二つの意見がありました。今後も試行錯誤や意見交換を重ね次回に生かしたいです。

7、これからの活動に向けて

1期から始まったこのおしゃべり鑑賞会の企画を、2期の活動を経て4期の方へバトンを受け渡すことができました。「~ながラー」として様々な経験を積み、ブラッシュアップしながら、この鑑賞会が今後も形を変えながらずっとつながっていくとよいと感じています。

**各実施日参加状況**

活動日時:2023年11月25日(土)11:00~11:45、14:00~14:45
対象展示:所蔵品展示「さかのぼり岐阜洋画史 大正・明治編」「林武史《石間》安藤コレクションから」
参加者:9名(午前:4名、午後:5名)

鑑賞作品と担当「〜ながラー」
午前
Aチーム:坂井範一《憩へる女》1926、林武史《石間》2011、窪田喜作《家族》1902
担当「〜ながラー」:戸部、松井、伊藤
Bチーム:北蓮蔵《午の憩》1916、窪田喜作《家族》1902、林武史《石間》2011
担当「〜ながラー」:松本、中村、和田、佃(サポーター)

午後
Aチーム:坂井範一《憩へる女》1926、林武史《石間》2011、窪田喜作《農家》1900頃
担当「〜ながラー」:戸部、王田、松井
Bチーム:北蓮蔵《午の憩》1916、窪田喜作《家族》1902、林武史《石間》2011
担当「〜ながラー」:松本、中村、佃、山崎(サポーター)

 

活動日時:2023年12月20日(水)11:00~11:45、14:00~14:45
対象展示:所蔵品展示「さかのぼり岐阜洋画史 大正・明治編」「ルドンコレクションから:黒との会話」「林武史《石間》安藤コレクションから」
参加者:8名(午前:5名、午後:3名)

鑑賞作品と担当「〜ながラー」
午前
Aチーム:窪田喜作《農家》1900頃、ロドルフ・ブレスダン《善きサマリア人 》1861 、窪田喜作《家族》1902
担当「〜ながラー」:松井、伊藤、中村
Bチーム:林武史《石間》2011、北蓮蔵《午の憩》1916
担当「〜ながラー」:市川、佃、山崎(サポーター)

午後
林武史《石間》2011、北蓮蔵《午の憩》1916
担当「〜ながラー」:市川、中村、伊藤(サポーター)、松井(サポーター)

 

活動日時:2023年12月23日(土)11:00~11:45、13:00~13:45
対象展示:所蔵品展示「さかのぼり岐阜洋画史 大正・明治編」「ルドンコレクションから:黒との会話」「林武史《石間》安藤コレクションから」「フォルムーやきものから」
参加者:7名(午前:3名、午後:4名)

鑑賞作品と担当「〜ながラー」
午前
山本芳翠《婦人像》不詳(寄託作品)、林武史《石間》2011、北蓮蔵《午の憩》1916
担当「〜ながラー」:加納、鈴川、松本、伊藤(サポーター)、佃(サポーター)、松井(サポーター)

午後
チーム:山本芳翠《婦人像》不詳(寄託作品)、林武史《石間》2011、北蓮蔵《午の憩》1916
担当「〜ながラー」:加納、王田、松本
Bチーム:窪田喜作《家族》1902、鯉江良二《土に還る》1971、林武史《石間》2011
担当「〜ながラー」:伊藤、佃、鈴川、松井(サポーター)

 

執筆:「~ながラー2期」市川めぐみ、中村佐和子、松井真理子

12月20日午前の部鑑賞会参加の「~ながラー」メンバー 鑑賞会受付前にて

12月23日鑑賞会参加の「~ながラー」メンバー アートコミュニケーターズルームにて

12月20日午後の部鑑賞会参加の「~ながラー」メンバー 鑑賞会受付前にて