【基礎ゼミ】第4回〈きく力〉
【基礎ゼミ】第4回〈きく力〉
実施日:2024年5月25日(土)10:30〜15:00
会場:岐阜県美術館 アートコミュニケーターズルーム(以下ACルーム)
講師:西村佳哲さん(有限会社リビングワールド 代表)
内容:コミュニケーションの基本は、話している相手に本当に関心をもって「きく」ことから始まります。お互いの思いや力を出し合って、プロセスを共有する方法について学びます。
きく力を身に付ける
「〜ながラー」は3人1組で、対話をするワークをしました。
3人はそれぞれ聞き手、話し手、観察の役割を担当しました。話し手は、最近嬉しかったことや腹が立ったことについて感情を込めて話すように指示されました。聞き手は話し手の話を否定したり、横取りしたり、解決策を提示したりするよう指示があり、観察役は、対話の中で起こっている状況や、聞き手が話し手に与える影響を観察しました。
対話の後は、聞き手の聞き方は、話し手にどのような影響があったのか、話し手はどのような気持ちの動きがあったのかを振り返りました。
ワークを体験した「〜ながラー」は、「否定することが心苦しい」と話す人もいれば、「普段からよかれと思って解決策を提示していた」と話す人もいました。
意識的に対話をするワークを通し、聞き手の聞き方によって、話し手に大きな影響があることが分かりました。また、普段の生活の中で、実は相手の話をよく聞けていなかったことも実感していました。
話し手の話の内容に興味がある聞き方、話し手本人に興味のある聞き方
話し手が満足に話せない聞き手の聞き方として、①横取り②否定③解決④無視といった4つの聞き方が取り上げられました。①〜③は、一見すると話し手の話をよく聞いているからこそ出てくる反応のように思われます。しかし、これは話し手の「話の内容」に興味がある聞き方であり、①〜③の行為を起こそうと考えた時点で、話し手の話を最後まで聞いていないことになります。
話し手が自身の感情を込めて詳しく話すことができれば、聞き手がただ話を聞いているだけでも話し手は満足したり、話す中で解決策を導き出したりします。
このことから、話し手が「話すこと」、「考えや感情を出してみること」に作動性があるのではないかということを西村さんは話されました。
では、話し手が満足に話せる聞き方とは、どのようなものなのでしょうか。話し手の話は、話(事柄)と話ぶり(気持ち)という要素に分けることができます。
普段私たちは、話している内容を正確に知的に聞き取ることを意識してしまいますが、話し手の表情、仕草等の話しぶりから、話し手本人の感情を汲み取り、寄り添うことが「話し手本人に興味のある聞き方」につながると、西村さんからお話がありました。
ワークでは2人1組になり、「話し手の話の内容に興味がある聞き方」と「話し手本人に興味のある聞き方」の2通りの聞き方を試しました。
話し手は同じ話を2回しますが、1回目はスムーズに会話を進めていたのに対し、2回目ではより身振り手振りが多くなったり、当時の感情をより鮮明に思い出して楽しい気持ちになったと振り返ったりすることができました。
言葉の抽象度
3人1組でワークをしました。話し手はお題として出される言葉を使わずに説明をし、聞き手2人は、話し手がどんな言葉を指しているのか考えました。
日常の中で頻繁に使う言葉でも、それぞれの理解度や解釈の違いからか、なかなか周囲に伝わらなかったチームがあったり、身振り手振りで必死に説明するチームがあったりしました。
言葉は抽象度が高いため、わかった気になりがちですが、同じテーマや言葉で話をしていても、どう感じ、どう表現するかは人それぞれです。そして、話し手の中にある気持ちや感覚がひとつであるとは限りません。聞き手は安易にわかったような気になることなく、また自分の物差しで話し手の話を処理しようとせず、その瞬間の話し手を聞こうと務めることが大切だと西村さんはお話しされました。
~ながラーのふりかえり
・私は「安易な解決策」をすぐに出してしまいがちで、「話の横取り」も時々やってしまいます。自分の癖をよく振り返るいいきっかけになりました。「聞き手に対して話すだけでエネルギーを得て自分の力で解決に向かう」のは、聞く力の大事な部分かなと思いました。獲得できるようにしていきます。
・会話の中での聞き手の返し方だけでなく、フォーカスする対象が話の内容か、その人の感情かという違いだという点が、会話がすれ違う際の要因の一つでもあるという事を体感でき、違和感を感じた時の正体はこれだったのかと腑に落ちました。話し手は話しながら気持ちを整理する部分も大きいので、それを手助けできるような受け止めができるようになりたいと思いました。
・印象に残っているキーワードは『関心がすべてのエネルギー源』『自分の物差しで人の話を処理しない』『人の中にある気持ちや感覚は一つとは限らない』仕事の中でのコミュニケーションは「傾聴して共感する」が基本になっていましたが話し手の本当の気持ちの部分まで引き出していなかったのではないか?自分の物差しで話を処理し「はい」「いいえ」で答えさせていたのではないか?と反省しています。今回のゼミでの気づきを今後の活動や仕事でも意識して活かしていきたいです。
スタッフのふりかえり
西村さんの講座でたくさんのワークを通し、普段無意識的だった「きく力」の重要性を、それぞれが再認識できたと思います。チームでプロジェクトを進めていく「~ながラー」にとって、基本的で大切な考え方「きく力」を意識して持ち合い、安心して対話のできる環境づくりを実践し、アートコミュニケーターの活動を楽しんでほしいです。