ふらっとおはなし丸

「この舟のろう方式」による活動の記録を、「〜ながラー」の視点からふりかえり、アーカイブとして掲載します。
今回は「ふらっとおはなし丸」の企画の様子をお届けします。

【ふらっとおはなし丸とは?】
「ふらっとぱ~く:見る、触れる、話す、感じる、考える」展で、展示室内に一定時間待機し、来館者のお話を聴き、対話を行った舟です。来館者の「誰かに感想を話したい」、「これってナンヤローネ」という思いにも寄り添って、誰もが対話しながらの鑑賞を楽しめるきっかけになるよう、活動を行いました。

【活動期間】2025年7月~2025年10月

【メンバー】
4期:佃
5期:桐山、平光
6期:伊藤、色部

1.舟の発足

この舟の発足のきっかけは、2025年4月12日(土)『〜ながラーピクニック交流会』。2025年第1回の基礎ゼミの一環として、今期に入った「~ながラー」6期も交え、ピクニックシートを広げて交流会が行われました。ここに西田学芸員も参加。実施予定の展覧会で考えていることを話され、「~ながラー」もぜひ活動してほしいとおっしゃっていました。公園のように、おしゃべりしながら鑑賞できる展覧会にしたい、という西田学芸員の思いを実現するために、「〜ながラー」としてできることは何だろう、と考え始めました。

2025年6月21日(土)、「〜ながラー」に向けた「ふらっとぱ〜く:見る、触れる、話す、感じる、考える」(以下「ふらっとぱ〜く」)の研修会が開催。
西田学芸員からは、「作品を見て、さらに触れて、会話が生まれ、作品を通して感じたことを深く考えるきっかけになれば」という、展覧会にかける思いのお話しがありました。教育普及、林係長からも、「~ながラー」として、基礎ゼミ等での学びを生かしてできることは何か、アイデアをどんどん出してほしいというお話もありました。

この展覧会を十二分に味わうには、対話や鑑賞を一緒に楽しむ人が必要ではないだろうか?
そこで、実現したいと思ったのが、昨年も実施された「『流し』の鑑賞フレンド」という「展示室内にて一定時間待機し、来館者が作品を観たときにふっと湧き出る感想や『ちょっと誰かに話してみたい』という思いに寄り添い、お話を聴く」活動を、ふらっとぱ~く展で行うこと。

【2024年度 「流し」の鑑賞フレンド丸 の活動はこちら

作品を見た感想を共有できる場がもっとあってほしいという思いや、まさに対話がキーになる今回の展覧会に求められる活動だと思ったことから、説明会後、「『流し』の鑑賞フレンド」未経験の5期メンバーと、昨年度まで「『流し』の鑑賞フレンド丸」で活動していた4期メンバーが話し、舟結成に向けて動き出しました(舟:3人以上が集まり、アイデアを出し合って活動をするチーム)。

7月上旬に「〜ながラー」専用の掲示板で募集を開始し、zoomでの説明会の開催や、多くの「~ながラー」が集まる実践ゼミでの声かけを実施。
そうして集まった、4期・5期・6期の3期にまたがる計4人で舟は出航しました。

2.企画作成

2025年9月5日(金)から開始となる「ふらっとぱ~く」での活動に向けて、ミーティングを重ねて企画書を作成していきます。

まずは、舟として大切にしたいことはなんだろう?ということを、メンバーの思いを聞き、見定めていきます。話し合いの結果、目的・ねらいは「対話による鑑賞のきっかけをつくるため、「〜ながラー」として学んだことを活かし、気軽にお話ができる場づくりを通して、来館者と「〜ながラー」が一緒に鑑賞を楽しめるようにする」こととしました。

来館者の方と一緒に「お話ししたい!」ということと、「ぱ~く」=公園に見立てられた展覧会にふさわしい名前として、「隊」とするとよいのでは?ということで、活動名は「ふらっとおはなし隊」に決定!
舟の名前は、「ふらっとおはなし丸」としました。

来館者の方が話しかけやすいようにするための工夫も検討。「ふらっとおはなし隊」と一目でわかるよう、昨年度の「『流し』の鑑賞フレンド丸」で作成されたゼッケンを参考にして目印を制作し、「~ながラー手芸部」が制作したサコッシュをお借りして装着。

そのほかに、活動のチラシ等のアイテムを手渡すこともアイデアとして出ましたが、展覧会自体で用意される、感想を書くふせんや、触れる作品、《Such Such Such》といった、話のきっかけになるような仕掛けを最大限活用することとしました。

3.本番前、リハーサル!

2025年9月6日(土)、リハーサルを実施。
目印を取り付けたサコッシュを肩にかけ、前日に展示が始まったばかりの展示室へ。
来館者の方が話しかけやすく、かつ圧迫感を感じさせない立ち位置や、ローテーションの確認、来館者対応のロールプレイを行いました。作品もみんなで鑑賞し、「こんな話ができそう!」と、会話のポイントも探りました。4期の「~ながラー」から昨年度までの「『流し』の鑑賞フレンド丸」で培われたノウハウも教わりました。一方で「個々人が自分なりの工夫を編み出していくことが大切」ということも学び、自分ならどんなことができるだろう?と考えました。

リハーサル後、本番前最後のミーティング。当日の動きや、気を付けること、作品についての話のほかに想定される質問(バス停の場所や、車いすの利用、チケットについてなど)も確認しました。

SNSでの告知も実施し、準備万端です!

4.活動本番!

満を持して、2025年9月13日(土)より本番開始。

毎回、開始前にはブリーフィングを実施。3つの約束として「監視の方に挨拶すること」、「作品についての詳しい話を訊かれたり、落とし物や、万が一触ってはいけない作品に触った方がいた場合は監視の方と同席する美術館スタッフに共有すること」、「作品を保護するため、立ち位置等に気を配ること」を必ず確認。前回振り返りで出た内容や、当日の他の舟の動きを共有するとともに、その他不安なことや気になることがないかも確認して、いざ展示室へ。

活動が終わったら良かったことや気になったことをみんなで共有。このように、回ごとに工夫を重ねていきました。
全4回実施し、さまざまな来館者の方とお話しさせていただきました。以下、各回の様子をご紹介します。

【第1回 2025年9月13日(土)】
第1回を実施しました。あいにくの雨模様で来館者少なめのスタートでした。
今回の展示は触れる作品もありメンバーと来館者の方が一緒に触りながら佐藤慶次郎《エレクトロニックラーガ》を演奏してみたり、感想を話したりして楽しむことができました。
《Such Such Such》が初体験の方や戸惑われている方へのご説明や、「AR作品エリア」の案内も行いました。「AR作品エリア」では、「説明をうけてやってみようとなった」と言っていただき、スマートフォンの画面上で、机の上にパッと作品が現れ、「おっ!」という驚きを共有できました。特にARエリアはまだまだメンバー自身が不慣れなところがありましたが、説明の経験を積み、次回のための学びが得られました。
「意見交流エリア」では来館者の方から「美術館でおはなしできるのは面白いですね」という声をお聞きしました。
今回は第1回目だったので、声のかけ方や距離の取り方に戸惑いはあったものの、特に大きなトラブルもなく終了することができました。

【第2回 2025年9月23日(火・祝)】
祝日かつビビビ丸さん(別のアートコミュニケーターの活動)のイベントと同時間ということもあり、今までより来館者が多く展示室がとても賑やかな日でした。
おはなし隊が来るのを待っている来館者がいたり、新聞で触れる作品があると知って来館されたご家族がいたり、実施時間1時間ずっとお話しも交え鑑賞される方がいたり、「ふらっとぱ〜く」らしい時間になりました。
「さわる作品エリア」の彫刻作品、柳原義達《風の中の鴉》を鑑賞されていた方に作り方を問われ、監視員さんに繋いだことで、その後お話しが生まれました。
保護者の方がSTYLYを取り込む間に、お子さんと「おはなし隊」とで佐藤慶次郎《エレクトロニックラーガ》を触ってみて、鑑賞(音の出し方)が上手になったということもありました。
佐藤昌宏《地のいきもの》を食い入るように見ていたお子さんと同じ目線になって鑑賞し、最後は《Such Such Such》を体験してもらいました。思いもよらない景色がうかんでいたことをお聞きすることができました。

【第3回 2025年9月27日(土)】
この日は来館者は少なめでしたが、それぞれがゆっくりとお話ししたり、作品との出会いをサポートしたりすることができました。

今回は特に、「AR作品エリア」と「さわる作品エリア」で、鑑賞方法に戸惑っているようなご様子の方に、ごく簡単な説明やご案内をする場面がしばしばありました。
AR作品を鑑賞するためのタブレット画面の裏側に手をかざしていただいた瞬間、驚いたあとの楽しそうな笑顔がとても印象的でした。また、別の方からは「光の当たり方が違うので、ARと実物では見え方が違うね」との感想がありました。来館者の自由で多様な感性に触れ、作品の新しい見方を得られる喜びを共感することができました。
今回の活動は、企画展示の趣旨にもぴったり合っていて、改めてよい時間だったなあと感じています。
一方、自分のペースで鑑賞したいという方もいらっしゃいました。声をかける見極めも大事であること、あくまでこの活動は楽しみ方の一つを提案するものであり、楽しみ方は来館者が選ばれるものである、ということを認識しました。メンバー間での、声かけの要否といった情報の共有も必要だと思いました。

【第4回(最終回)2025年10月4日(土)】

最終日、土曜日なので鑑賞者も多く来場するのではないかと期待しながら準備を始めました。当日のメンバーは3名と少なかったため、多数のエリアを分担して待機しました。
活動ツールとしてサコッシュに取り付けた「おしゃべりしませんか?」の案内目印を見せて「こういう活動をしています」とお声がけすると、「話していいんですか?」と言われ、作品を見ながらお話しが始まりました。特に若い人に多かったように感じました。自分なりの感想や作品の中の登場人物へのイメージを語る方がいらっしゃったのも印象に残っています。「意見交流エリア」では、作品の中で、自分の好きなところをお話ししてくださった方もいました。

また、「この作者の意図は何だろう?」と質問されたとき、あえて説明はせずその疑問に寄り添うことにしました。作品名を見て同行された方がご自身の思われたことを言われたので監視の方に聞くまではしませんでした。相手の方が何を求められているか、対話をしながら探ることが大切だと感じました。
触ってもいい作品では「触ってもいいですよ」と、こちらから一声かけて初めて触る方が多かったようです。天野裕夫《重厚円大蛙》では、作品の説明書きにあったライトの使い方をご案内することによって、中に潜んでいるものを発見して楽しんでいました。どんなふうに作ったんだろうと細かいところまで見てもらえたりして、デコボコした質感や、素材の違い、階段みたいになっていて面白い、などと話も弾みました。

作品を一緒にお話しして鑑賞した際、「そういう見方もあるんですね」とお話しいただいたり、その後ご自身でもじっくり作品をみられていたという場面もあり、様々な見方の共有や鑑賞体験のきっかけになったと感じられ、うれしく思いました。

最終回として、これまでの積み重ねを生かした、様々なおはなしが生まれる回となったと感じています。

5.まとめ

今回の「ふらっとおはなし丸」の活動では、展覧会「ふらっとぱ〜く」がめざす「公園のように、自由におしゃべりしながら鑑賞できる場」を来館者の方と一緒に味わいたいという思いが実現できました。
発足から企画づくり、リハーサル、本番まで、期をこえて集まったメンバーが互いの経験を持ち寄り、試行錯誤を重ねながら少しずつ形にしていった時間そのものが、まさに対話と協働の積み重ねであり、この活動の大きな成果だったと感じています。
なにより、「誰かと話すことで作品がもっと面白くなる」「美術館でこんなふうにお話しできるのは新鮮」という来館者の言葉は、メンバーにとって大きな励みであり、対話がもつ力を改めて実感する瞬間でした。
今回、「ふらっとおはなし隊」として、展示室内に滞在し、来館者の方々とコミュニケーションを取ることで、人と作品、美術館を繋ぐという、アートコミュニケーターの役割を果たせたのではと考えています。来館者の方と一緒におしゃべりをすることで、自分たちも様々な発見をさせていただきました。
これからも、よりよいアートを介したコミュニケーションの在り方を探り、更なる活動に邁進していきたいと思います。
そしてここに、岐阜県美術館に来てくださり、また一緒にお話ししてくださった来館者の皆様にお礼を申し上げます。

6.メンバーの感想

・この活動に取り組んだ背景には、「〜ながラー」(=アートコミュニケーター)として、来館者の方々と作品を通じてその場でおはなししたいという気持ちがありました。これは、私が3年間ずっと大切にしてきたテーマです。そして「〜ながラー」として過ごす最後の年に、「らっとぱ〜く」に出会えたことは、本当に嬉しくありがたく思えました。今回の展示室では、小さなお子さんやベビーカー・車いすをご利用の方、聞こえにくい方、ヘルプマークをお持ちの方、そしてそのご家族の方々など、いつも以上にさまざまな来館者の方々と出会うことができて、とても心に残る活動になりました。
この「舟」には、4期・5期・6期と期を越えてメンバーが集まり、何度も話し合いを重ねながら、いろいろな来館者の方にどうすれば心地よく過ごせて、かつ鑑賞を楽しんでいただけるか、みんなで考え準備を進めてきました。
お話ししたい方、そうでない方、サポートが必要な方、ご不要な方——それぞれが美術鑑賞を楽しめるように、「寄り添う」ってどういうことだろう?と、メンバーでじっくり考えることができたのは、とても有意義でありがたい経験となりました。
「この舟のりませんか!」で集まってくれたメンバーのみなさん、本当にありがとうございました。(4期 佃)


・人が何人かいるだけで話しやすい=誰かがそこにいて話ができる話しやすい雰囲気作りができて、今回の展覧会にあった活動になっていたと思います。
経験者と未経験者が良い具合に交流でき少人数の強みとして4期・5期・6期のメンバーで情報共有もしっかりできてよかったし、色々と学ぶことができました。「来場者と一緒に楽しもう!」が、初日の緊張もほぐれ最終的には楽しく活動することができました。よい体験になりありがとございました。(5期 平光)

・実施時間によってはイベントと重なり賑やかだったり、おはなし隊の方が来館者より多い!?時もあったり状況は様々でしたが、回を重ねることで気負わず話しかけることができました。とは言え、静かに鑑賞したい方もいらして足早にお帰りになられたことがあり残念でした。話しかける時は状況をよくみないといけないと感じました。(話しかけなければ!と思ってしまっていましたが、そうではないことに後に気づきました。)
こちらからの積極的な声掛けになってしまうこともありましたが、回を重ねるうちにほんの少しだけ対話のようなことが出来たことがよい経験になりました。(6期 色部)

・どのように作品を鑑賞すればよいのか分からないような様子が見られたときには、さりげなく声掛けをすることによって鑑賞が進むことが増えました。《Such Such Such》エリアでは参加を促したり、前向きな気持ちで製作していることを褒めたりして鑑賞者の「できた」という達成感や満足感を高められるといいと思いました。
「どう声掛けしよう?」と思ったら、一声かけて様子を見て、無理に誘導することはなく自由に見てもらうのがよいと思いました。「話しかけないといけない」というわけではなくそっと寄り添い、見守り、困っていたら声掛けすることが大切であり、心地のよい鑑賞を促すと思いました。黙って鑑賞する楽しみもありますが、今回は私たちが近くにいることで、話を聞く準備ができました。また、鑑賞者自身の思いを振り返ったり、お互いに共感したりする話しやすい雰囲気づくりもできたように感じています。(6期 伊藤)

・美術館に行くと、「作品をみて思ったことを聞いてみたい、話してみたい」と思うことがよくありました。「流し」の鑑賞フレンドの活動を聞いたときから、「まさにこういう活動を自分もしたい!」と思っており、今回実現ができました。4期の方とも一緒に活動でき、思いや考え方、来館者とのやり取りについてだけでなく、「~ながラー」同士のコミュニケーションの在り方まで、大切なことを学ぶ貴重な機会にもなりました。
美と対話することをテーマとし、「~ながラー」の活動を広く受け入れてくださった岐阜県美術館、そして何より、来館者の皆様に感謝申し上げます。このようなアートを介したコミュニケーションの場、様々な楽しみ方ができる環境をもっと作っていきたいです。(5期 桐山)

 

**実施イベント**

⚫︎イベント名:「ふらっとおはなし隊」
⚫︎活動日時:
・2025年9月13日(土)13:30~14:30
・2025年9月23日(火・祝)13:30~14:30
・2025年9月27日(土)13:30~14:30
・2025年10月4日(土)13:30~14:30
参加者:128名

執筆者:佃(4期)、桐山、平光(5期)、伊藤、色部(6期)