2025年度基礎ゼミアーカイブ

2025年4月12日(土)の第1回基礎ゼミではオリエンテーションを行い、本格的に6期の活動がスタートしました。
「〜ながラー」が美術館で活動する上で、アートコミュニケーターの基礎的な考え方や対話のあるコミュニティづくり、美術館のあり方について学ぶ第2回以降の基礎ゼミを振り返ります。

第2回基礎ゼミ

<美術館×作品×来館者×アートコミュニケーター>
実施日:2025年4月26日(土) 10:30~15:00
会場:AM 講堂/PM アートコミュニケーターズルーム(以降ACルーム)、展示室
講師:稲庭彩和子(国立アートリサーチセンター 主任研究員)
美術館という場所を考え、そこにアートコミュニケーターが関わることでどのようなポジティブな化学変化が生まれるか、ミュージアムを中心としたウェルビーイングや活動の展開について考えました。

午前中は、美術館での体験が社会や人に与える影響について、ウェルビーイングの方面や、対話型鑑賞の取り組みを交えてのお話がありました。そして、美術館を多様な価値を持った人々が関わりをつむぐ場とするために、アートコミュニケーターとして、どのように人と資源をつなげていけるか考えてほしいと稲庭さんはお話しされました。美術館やアートコミュニケーターの役割について「~ながラー」は真剣な表情でメモを取りながら聞いていました。

 

 

 

 

 

午後は「合理的配慮」や「社会的処方」、そしてアートコミュニケーター活動の先の選択肢のひとつである「文化リンクワーカー」の説明や取り組みについて、資料を交えてお話がありました。「アートを介して対話する」の一環として対話型鑑賞を実際に体験するため、皆で展示室に移動しました。

展示室全体を見た後、指定の作品の前にグループで集まり、15分ほどじっくりと見ました。どのグループもじっくりと観察してメモをとり、発見したことや感じたこと、わからないことについて話し合っていました。その後、ACルームに戻り、各グループで出てきた意見や感想を発表し合いました。他者との対話の中で、自身では気づかないことに気づいたり、共有することで自分の考えを客観的にとらえたり、話が深まっていきました。

第3回基礎ゼミ

<ミュージアムの特性を活かした活動とは?>
実施日:2025年5月10日(土) 10:30~15:00
会場:ACルーム
講師:伊藤達矢(東京藝術大学 社会連携センター教授/センター長)
ミュージアムが再定義される今、アートコミュニケーターとして美術館をどのように社会とつなげるのでしょうか?
アートコミュニケーターのこれまでとこれからを学びました。

午前中は、「アートコミュニケーター」がどのような存在であるのかを、美術館の機能を再確認しながら、アートコミュニケーターの成り立ちや社会の中での役割、東京都美術館と東京藝術大学のアートコミュニケーション事業「とびらプロジェクト」の取り組みについてお話しいただきました。アートコミュニケーターとして、美術館での体験をデザインしていくこと、対話を取り入れアートコミュニケーターとしてミュージアムの社会装置的役割を担うことが重要であるとお話しされました。

 

 

 

 

 

また、2025年度の「~ながラー」としての活動が始まって日が浅いことから、「チェックイン(名前+一言の簡単な自己紹介)」や「シェアタイム」など簡単なワークをはさみ、お互いの考えを知ったり、対話を重ねたりし、理解を深めていきました。これからアートコミュニケーター「~ながラー」として活動していく上で、「~ながラー」同士のコミュニケーションが必要不可欠ということで、午後からはお互いを知り、深くコミュニケーションをとるため「Show and Tell」(他己紹介に似たワーク)に取り組みました。

 

 

 

 

 

「~ながラー」はこの講座のために、「大切にしているもの」を持参し、2人1組で10分ずつ、お互いが大切にしているものについてインタビューしたり質問したりしました。そして最後に、相手の大切なものについて、全体で発表をしました。発表に向け、大切なものに付随するエピソードや思いをメモしたり、美術館ホールの好きな場所で、大切なものを展示して写真を撮ったりしました。「大切なもの」を通すことで自身のことを話しやすくなったり、相手を知る窓口となったりしたようで、講座の始まりの時より打ち解けた雰囲気になっていました。

第4回基礎ゼミ

〈きく力〉
実施日:2025年5月31日(土) 10:30~15:00
会場:ACルーム
講師:西村佳哲 (リビングワールド 代表、働き方研究家)
コミュニケーションの基本は、話している相手に、本当に関心を持って「きく」ことから始まります。お互いの思いや力を出し合って、プロセスを共有する方法について学びました。

 

 

 

 

 

「~ながラー」としてさまざまな人と関わる時、話す力や表現する力以上に聞く力や感受する力が重要になります。

午前中、「〜ながラー」は3人1組で、対話をするワークをしました。西村さんは各役割を次のように指示しました。
話し手…お題について感情を込めて話す
聞き手…話し手の話を否定したり、横取りしたり、解決策を提示したりする
観察役…対話の中で起こっている状況や、聞き手が話し手に与える影響を観察
対話の後は、聞き手の聞き方は、話し手にどのような影響があったのか、話し手はどのような気持ちの動きがあったのかを振り返りました。ワークの体験から、人が対話の中で不快に感じる状況や聞き方を客観視することができました。

 

 

 

 

 

午後は午前中の内容を踏まえ、対話の中で相手が話したいと思える状況や聞き方にフォーカスしてワークが行われました。午前のワーク同様3人1組でそれぞれの役に分かれ、「話し手の話の内容に興味がある聞き方」と「話し手本人に興味のある聞き方」の2通りの聞き方を試しました。相手のことを分かったつもりにならず、わからない相手に関心を持ち続けることを大切にしてほしいと西村さんはお話されました。

 

第5回基礎ゼミ

<会議が変われば社会が変わる>
実施日:2025年6月21日(土) 10:30~15:00
会場:ACルーム
講師:青木将幸(青木将幸ファシリテーター事務所 代表)
チームで活動を進めていくとき、ひとりひとりが主体的に関わる直接的な話し合いが重要です。ミーティングの理想的なスタイルや具体的な手法を実践的に学びました。

 

 

 

 

 

よい会議にはウォーミングアップが必要です。話しやすい雰囲気を作ることや、全員が発言をしていることが大切ということで、午前のはじめはボードに好物を書き、全体で交流をしました。会議の前に使えるウォーミングアップの仕方や、"Good Meeting''にするためのヒントやコツをお話しいただきました。そして会議の基本構造として、「共有」「拡散」「混沌」「収束」の4つの段階があることも教えていただきました。「~ながラー」は日々の疑問を質問しながら、会議の理想的なスタイルを学んでいきました。

 

 

 

 

 

午後は会議の4つの段階を意識して、会議の実践をしました。
テーマは「~ながラー」から募集し、各グループでファシリテーター係、板書係、タイムキーパーの役割をつくりグループで実践をしました。
「古い着物を活用するには」や「長良川を活かしたアートイベント」など、それぞれの議題に「~ながラー」はウォーミングアップを取り入れたり、どこの段階にいるか意識したりして、講座の内容を反映させながら思い思いに意見を出し合いました。

第6回基礎ゼミ

<障害とはなにか、差別とはなにか><マイクロアグレッションとは>
実施日:2025年6月28日(土) 10:30~15:00
会場:ACルーム
講師:川島聡(放送大学 教授)、岐阜県美術館 アートコミュニケーター運営チーム
多様な来館者をとりまく、障害や差別といったキーワードを切り口に、「障害の社会モデル」から「障害者差別解消法」、そして「合理的配慮の概念」について学びました。
また、コミュニケーションをとるうえで配慮したい「無自覚な差別」について考えました。

 

 

 

 

 

午前中は、障害者差別解消法の定義に基づき、「障がい」や「差別」についての理解を深め、障がいがある人が社会や日常で感じる制限について、具体例を交えながら解説をしていただきました。美術館で活動し来館者と関わる「~ながラー」として、「法が禁ずる差別とは何か」を知ることが大切だと川島さんはお話されました。そして来館者の背景を考慮しながら、意向を聞き、負担のない範囲で実行することが必要であること(合理的配慮)も学びました。

 

 

 

 

 

午後は様々な事例に対してどのような配慮をすべきか、事例が差別に当たるかどうかを考える確認問題にグループディスカッションを交えて取り組みました。合理的配慮を提供する上で「何の平等か」を常に考えてほしいと川島さんはお話されました。また、ゼミの前に出題された美術館での障がい者差別について、ゼミに参加する前と参加した後の考えの変化について交流しました。ゼミの中で「~ながラー」は時間をかけて悩みながらも意見を出し合い、真剣に向き合う様子が見られました。

また、美術館スタッフが「マイクロアグレッション(無自覚の偏見)」をテーマに美術館で活動する上で、来館者への声掛けの工夫について話をしました。配慮には常に対話が大切であることについて話をしました。

第7回基礎ゼミ

<なぜ、芸術鑑賞に対話が必要なのか>
実施日:2025年7月5日(土)  10:30~15:00
会場:AM 講堂/PM ACルーム
講師:会田大也(ミュージアム・エデュケーター/ 山口情報芸術センター[YCAM] 学芸普及課長)
アート作品と鑑賞者の関係性を考え、作品を鑑賞することから始まる学びやコミュニケーションについて学びました。

午前中は作品を介したコミュニケーションについて、概念や仕組みをお話しいただきました。「~ながラー」はモニターに映し出された作品を鑑賞し、会田さんの問いかけで実際に対話をしながら鑑賞をしました。一見難しいと感じられるような抽象的な作品でも、自分以外の意見を通して多様な見方に触れ、発見があったり、第一印象が変化したりします。「~ながラー」は実践を通して、対話の重要性や可能性を感じる時間になりました。

 

 

 

 

 

午後は4人1グループになり、ワールドカフェ(リラックスした雰囲気で行われる少人数の対話手法)を実践しました。午前中鑑賞した作品について、メモをもとに15分ほど話し、ホストを一人残して席替えをします。ホストは前回の内容を共有し、新しいグループで議論を再開します。ワールドカフェで対話を重ね、たくさんの考えや意見に触れたことで、1人で観察して得たファーストインプレッションから大きく変化したと答える「~ながラー」が多数でした。対話型鑑賞に大切なことは、想像の外側の他者を想像すること、たくさんの他者や作品と出会うことだと会田さんはお話しされました。