妄想アート〈ワンアート丸〉
「この舟のろう方式」による活動の記録を、〜ながラーの視点からふりかえり、アーカイブとして掲載します。
今回は<ワンアート丸>が実施した「妄想アート」企画の様子をお届けします。
【活動期間】2020年4月~11月
【メンバー】近藤美紀、平岡靖教、大橋まりこ、青木三奈
2020年4月 はじまり
2020年に始まった〜ながラーの活動は、新型コロナウイルスと共に始まりました。そのため、Zoomなどオンラインでの活動に限られました。
アートについて、興味がある事が近い人同士でチームに分かれてみて、とりあえず何か活動をしてみる・・・〜ながラー1期生の活動はここから始まりました。
コロナで抑え込まれたいろいろな思い。しかし、その中でもこうやって好きなアートに関する活動をできる事への感謝・・・そういう、いろいろな思いを書いた紙を風船の中に入れ、風船を破裂させ、中に入った紙を散らばらせてひとつのアート作品を作る事を始めてみました。前年に開催されたラグビーワールドカップ日本代表の「ワンチーム」にあやかり、チーム名を「ワンアート丸」と名付けました。
2020年6月 実験
コロナ禍が続く中、ワンアート丸で実験をすることになり、美術館のアートコミュニケーターズルームにメンバーが集まりました。Zoomでは何度か顔を合わせていましたが、実際に会うのは初対面。すぐに打ち解けたメンバーによる実験が始まりました。
2020年7月 軌道修正
実験で作られた作品を基に、今後どのように展開していくか話し合いました。
誰に向けて、何のために、この作品を作るのか考えた時、私たちがこれをやる必要があるのか?という話になり、舟の活動はストップ。やや重たい空気の中、今後についてのZoomミーティングが行われました。
メンバー全員が大事にしたい事は、
・コロナ禍でも、岐阜県美術館を楽しんでもらえるにはどうしたらいいか?
・どこにいても、オンラインからでも、誰でも自由に出来る事とは何か?
・岐阜県美術館だからこそできることは何か?
・多様性とコミュニケーションを大切にできることがしたい
の4点でした。
話し合い中、何かいいアイデアはないかと考えていると、突然メンバーの一人がZoomをつないだまま自動車で移動し始め、自動車の音だけが聞こえてくる、という不思議な状況になりました。
「バタン」と車のドアが閉まり、かすかに聞こえるエンジン音。ミーティングをする事も忘れ何処に向かっているのだろう?と妄想を膨らますメンバー達。5分ぐらい走ったところで目的地に到着し、そこでZoomは途切れてしまいました。
ここで、違うメンバーの一人が、ある事を思いつきます。
見えない絵を、音のみの情報で妄想して、それで絵を描いてもらってみてはどうか?という事でした。
これなら、オンラインで楽しんでもらえるぞ!
当初意気消沈してたメンバーは、このアイデアにより息を吹き返し、程なく企画名は「妄想アート」に決まりました。
出題者がタイトルや絵を見せずにヒントを出す。そのヒントを手掛かりに、どんな絵なのか妄想するゲーム・・・これならオンラインでも参加して楽しんでもらう事が出来ます。
実際にどんなものか、動画を作成してみました。もしよかったら、実際にスケッチブックや絵を描く道具を準備し、実際にやってみてください。
絵が上手でも下手でも構いません。元の作品が分かっても分からなくてもOKです。
ルールはたくさん妄想を膨らます事。それだけです。
いかがでしたか?元となった絵はコチラです。みなさんは、どんな妄想を膨らませ、どのような絵を描かれましたか?
ワンアート丸以外の“~ながラー”たちに、実際にやってみてもらったら、こんなに味のある作品が出来上がりました。
実際にやってみて気づいた事、それは「妄想を共有する」ことの面白さです。
実際に描いてもらった写真を見ても分かる通り、同じ音声を聞いても、人によって書くことが全く違う点が面白い!という意見を、実際にやってみた“~ながラー”のみんなからもらいました
“~ながラー”からの評判が上々だったため、次は一般のお客様をZoomにお招きし、やってみる事になりました。
2020年11月29日 Zoomによるイベント実施
このイベントが開かれた2020年11月は、約1ヶ月に渡って様々な“~ながラー”発の展示やワークショップが開かれました。その大トリとして開かれたイベントが、この妄想アートでした。
“~ながラー”でやってみた時は、みんなそれなりに気心が知れた人同士でしたが、一般の方となるとそうはいきません。全員が初対面の方でした。
最初は、みんな少しぎごちなさがありましたが、出来るだけお客様にもお話していただく機会を作るなどの工夫をし、時間が経つごとにリラックスした雰囲気になっていきました。
最後の頃にはみんな笑顔が見え、2時間のイベントはあっという間に終わりました。
最初この企画をするにあたり、美術作品をこういう形で使う事を「本当にいいのか?」という気持ちもありました。しかし、“~ながラー”への実験や、実際にお客様をお招きしてイベントを行ううちに「美術作品って、こういう楽しみ方もあるのか」という気持ちに変わっている自分がいました。
この企画は、Zoomイベントを開いた事で、一区切りとなりました。ある意味、コロナ禍だからこそ思いついた、実現できたイベントだったのかもしれません。
直になかなか会えないからこそ、楽しんで描いた絵を「共有する」事は、とても尊い事であり、大事な事だとも分からせてもらったイベントだったように思います。
文:平岡靖教(1期)
動画:近藤美紀(1期)
チラシデザイン:青木三奈(1期)
校正:中嶋健太(1期) 、大橋まり子(1期)