「アーティスト・イン・ミュージアム(AiM)」は、アーティストが一定期間当館のアトリエで滞在制作を行い、その様子を公開する企画です。
今回、9回目となるAiMでは、岐阜県出身のアーティスト 三宅砂織が滞在制作を行いました。

三宅は今回の滞在制作へ向けて、1年前から幾度も岐阜県内を訪れ、自身とゆかりのある人物や場所を訪ねて取材を重ねました。同時に、当館の歴史やコレクションにも目を向けて調査することで、双方がゆるやかにつながっていきました。
これらの取材を経て、滞在制作では当館の庭園とそこにある野外彫刻、それらが設置された歴史的背景に焦点をあてながら、アトリエ内をもうひとつの庭園に置き換えて構成しています。
庭園を取材し撮影した映像作品は、三宅がこれまで手掛けてきたフォトグラムによる表現を踏襲しています。ネガとポジが反転する図像は、現実と非現実を行き来するようなイメージを表出します。それは三宅が語る「絵画的な像」とも言えるでしょう。
映像を投影している立体物は、アトリエ内に残され保管されていた物品を三宅が選び取り利用しています。微かな空気の流れに反応するストリングカーテン、野外彫刻をモチーフに穴をあけたカーペット、これらは作品に取り込まれることで、かつてそれにふれた誰かの気配を内包するものとして存在します。立体物と映像作品による構成は、複層的な像を表すとともに、実像と虚像が交錯する映像表現を試みています。
そして、三宅が今回の滞在制作で経験した様々なできごとと当館の歴史との交差を1点のフォトグラム作品が象徴的に表しています。

三宅のまなざしによって切り取られ、アトリエの空間に再構成されたイメージは、光と影、表と裏、地上と地下、見えているものと見えていないもの、相反する事象を含み込み、その双方の行き来を私たちに促します。そして、かつてこの場所にいた人々の営みと、彼らが見ていたものや風景を断片的に表出し、みた人それぞれの記憶や経験へと結びつけます。

開催概要

開催日 滞在制作 2021年2月13日(土)〜3月28日(日)
開場時間 10:00〜18:00
会場 岐阜県美術館 アトリエ
休館日 月曜日(祝日の場合はその翌平日)
観覧料 無料
主催 岐阜県美術館
後援 岐阜県教育委員会、岐阜市教育委員会

 

作品展示

 撮影:怡土鉄夫

関連プログラム

サイアノタイプ(日光写真)体験

三宅さんの作品を参考に、太陽の光で物や図像の影を焼き付ける技法「サイアノタイプ」を体験しました。

開催日 2021年3月14日(日)
※雨天のため3月13日(土)から日程変更しました。
時間 ①10:30~12:00
②13:30~15:00
会場  スタジオ

 

〜ながラーとの連携

〜ながラーのあの人・この人インタビュー vol.2<LINK・MEET丸>

当館のアートコミュニケーター「〜ながラー」が三宅さんにインタビューを行いました。

インタビュー実施日 2021年2月20日(土)、27日(土)、3月6日(土)

 

アーティストについて

三宅砂織/MIYAKE Saori

1975年 岐阜県生まれ
1998年 京都市立芸術大学美術学部美術科卒業
1999年 英国Royal College of Art 交換留学
2000年 京都市立芸術大学大学院美術研究科修了

長年、既存の写真をもとに陰陽反転したドローイングを描いてネガを作り、印画紙上に現像するフォトグラム作品を制作してきました。対話的プロセスを経て生み出された作品は、メディウムの曖昧な広がりと、画面のさらなる深層へといざなうような奥行きを有しています。近年は映像作品を手掛けるなど創作の幅を広げながら、人々の眼差しに内在する「絵画的な像」を、個の特異な経験の断片であると同時に、歴史や文化の連なりのあらわれでもあるような多声的空間として浮かび上がらせようと試みています。
近年の主な展覧会に「MOT アニュアル2019 Echo after Echo:仮の声、新しい影」 東京都現代美術館(2019-2020)、「庭園|POTSDAM」SPACE TGC(2019)、「第20 回 DOMANI・明日展」国立新美術館(2018)、「THE MISSING SHADE 3」WAITINGROOM(2018)、「ArtMeets04 田幡浩一/三宅砂織」アーツ前橋(2017)など。

アーティスト・イン・ミュージアムに関するお問い合わせ

岐阜県美術館
〒500‐8368 岐阜市宇佐4‐1‐22
TEL:058-271-1313/FAX:058-271-1315