「走泥社再考 前衛陶芸が生まれた時代」を対象に、ワークシートを用いて作品鑑賞を行いました。
「作品を鑑賞したときの自分の気持ちってナンヤローネ」をテーマに、作品を見たときに感じた自分の気持ちを粘土で表現する活動を行いました。

開催概要

開催日:令和6年2月4日(日)
時刻:13:30~15:30(120分)
会場:岐阜県美術館 多目的ホール、展示室3
対象展示:「走泥社再考 前衛陶芸が生まれた時代」
参加者:18名

プログラムの流れ

オリエンテーション

展覧会担当学芸員より展覧会の概要をお話いただきました。
そのあとにプログラムの流れを共有。
今回のナンヤローネアートアクションのテーマは「作品を鑑賞したときの自分の気持ちってナンヤローネ」です。

今回のワークは「走泥社再考 前衛陶芸が生まれた時代」を鑑賞し、180点以上ある作品の中から自分が「気になる」と感じる作品を見つけます。そして、その作品を見たときの自分の気持ちを表すとしたらどんな形をしているのか、粘土で表現してもらいます。

展示室で作品鑑賞

まずはグループごとに展示室内で作品鑑賞を行いました。

次に個人に分かれ、自分が気になる作品を探しました。
気になる作品が多く「一つの作品に焦点を当てるのが難しい。」と話す人もいました。

鑑賞にはワークシートを使い、作品を見て「気になる」と感じたことをスケッチしたり、文字で書いたりしてもらいました。
じっくり一つの作品を鑑賞し、作品から見えることと自分が受けた印象はどんなものだったのか。作品をよくみる、自分の気持ちはどんなものなのか。感じる、また作品をよくみる…といったように作品と自分の気持ちを行ったり来たりしてもらいました。

ワークシートには制作につなげるためのステップとして、パラメーターを用意しました。
例えば「その作品はかたい?やわらかい?」「その作品はしかくい?まるい?」など、作品からうける印象や、様子を形容するとしたら自分にとってどれくらいの指標のものになるのかを可視化してもらいました。

 

作品についてどんなことを感じたかをチームのメンバーに共有しました。
自分の気持ちを言語化し、チームで対話をすることで作品に対して自分がどう感じているのかをさらに意識することができました。

辻勘之《虫》(1974年)を鑑賞した参加者とメンバーの対話
「走泥社の活動の歴史の中で、つぼの形から離れていったはずなのに、25年後の作品でもっともつぼらしいものを見つけて興味を持った。ただよく見てみると、その口はふさがれ、先客がいることにさらなる興味深さ。しかも、それが植物などではなく「虫」。ことごとく裏切られた感じがしていい。」
「先客がいる!その感じ方すてきだわ~。そんな風に感じたことがない。確かに口が全部ふさがれている。そんなところに気づかなかった。」

里中英人《シリーズ:公害アレルギーI-VI》(1971年)を鑑賞した参加者
「蛇口が消えていく作品かと思ったら最初の蛇口から落ちた雫の変化もあって面白かった。消えてなくなって終わりではなく、残った水から植物がまた育っていくような続きがあるといいと思う。」

八木一夫《壁体》(1964頃)を鑑賞した参加者
「粘土を板のように表現したり、うにょうにょっとして全く違う表現をしたりして一緒に作られているのが面白い。固い感じと柔らかい感じがある。」

 

粘土で制作

自然乾燥で固まる天然陶土が入った粘土を使用しました。
土台とする板に収まるサイズで、作品を見たときの自分の気持ちを粘土を使って表現しました。

制作では作品から刺激を受け、熱い想いを粘土に込める参加者の姿がみられました。
また、「自分の気持ちに向き合うことに慣れてない。」と話す人も、鑑賞体験を通して自身の今後の人生と向き合いつつ自分の気持ちを表していました。

「段になっている部分は地層を表しているよう。大地から湧き出ているエネルギーのような…。作品の表面にダイナミックに残っている指の跡から感じた。」と語っていた人見政次《土の精》(1972年)を鑑賞した参加者は、層が積みあがった形と、何かを包み込んでいるような形で大地のエネルギーを表現。表面に指の跡を多く残し、触ってみたくなるような感じを表現していました。

「右前から見ると、魚類のような顔、左側から見ると恐竜のような顔に見える。表面がうろこのような状態で気持ち悪い感じ」と語っていた森野泰明《WORK60-13》(1960年)を鑑賞した参加者は、見る角度によって違って見える様子を裏表のテクスチャーを変えて表し、表面の気持ち悪い感じをブツブツや顔から直接歯が生えてくる様子で表現していました。

 

チームで交流

同じチームの中で、自分の気持ちをどのように表現しようとしたかを対話・交流をしました。

発表

チームの代表者に発表をしてもらいました。
気になると感じた作品が異なり、生まれた気持ちも様々でした。
今回の活動を通して、自分の気持ちを表現してからもう一度作品を見たらどんな気持ちになる?他の参加者が気になった作品は自分にとってどう見える?是非展示室にまた足を運んでみてください。とお声がけし、今回のアートアクションを締めくくりました。

参加者の声(アンケートから抜粋)

・一つの作品に着目して発想を展開していくことはなかなかないので、今回いい機会を得られました。
・いろんな人と関わって展覧会を見たり、話し合ったりすることがよかったです。視野が広がりました。
・普段考えないことに気づけました。楽しくて夢中になれました。ものを見て作るという初めての体験ができました。
・自己と向き合うことができました。
・人と話すことや作品と自分を行き来すること。それを形や文としてアウトプットすることができてよかった。
・ワークシートのQ4の2択が抽象的な印象を具体化する良い助けになっていると感じました。

スタッフの振り返り

・自分が気になった作品を追求してワークシートの活用をしてくれていました。作品についての自分の想いを表現することが難しい人も、制作の時間を通して自分の気持ちを昇華させていたのが印象的でした。
・気になった作品と向き合い、自身の解釈を見出そうと奮闘したある参加者の方は、鑑賞活動で自身の解釈を見出せなくても、制作を通して見出そうと、内省しつつ手を動かしていました。カタチに残る「成果」だけでなく、制作に至るプロセスを大切にし、また自身の気持ちや行為そのものを受け入れる参加者の方の気概は圧巻でした。
・幅広い年代の人の参加があり、今回のアートアクションでは対話での交流の様子が活発に見られました。初めましての人たちが、作品について制作中に手を動かしながらもコミュニケーションが生まれていました。