毛糸de朝顔〈ものづくり丸1班〉

「この舟のろう式」による活動の記録を、〜ながラーの視点からふりかえり、アーカイブとして掲載します。
今回は<ものづくり丸1班>が開催した「毛糸de朝顔」の様子をお届けします。

【活動期間】20217月~20227

【メンバー】加納稔 佐藤瑞恵 高木尚子 高橋玲子 塚本幸恵 中村佐和子 堀江香織 松井真理子 溝口美保

2021年7月 舟の出航

 〜ながラーの2期メンバーで、何か物を作ることが好き、でも舟はどうやって始めていくかよくわからないけど、とりあえず偶然集まったメンバー。まずはお試しミーティングをやってみようと、初めてオンライン上で集まったのが、2021年7月2日。Zoomを使ったミーティング、明後日朝顔プロジェクト※に関連付け、毛糸で朝顔をいろんな人が作ってそれを集めてつなげて人と人のつながりを表現しよう、と言い出した編み物が趣味のメンバーのプレゼンに、みんながすっかりその気になって舟が動き出した。 

そこで、まずは、メンバーたちで試作をしてみようということで、オンラインで編み物会をしたり、ぎふメディアコスモス(岐阜市)で各自が編んだ朝顔の花を持ち寄ったりするうちに、毛糸で作った花の暖かさを感じ、作る人によって個性豊かな色、形の朝顔がこの先どんどん増えていくことになる。

※2003年に新潟で開催された「越後妻有 大地の芸術祭」において、日比野克彦館長が新潟県十日町市莇平の集落の住民たちと共に始めた朝顔を育てるかたちで始まったのが「明後日朝顔プロジェクト」。その後、できた朝顔の種は全国へと運ばれ、朝顔の種が人と人、人と地域、地域と地域とが繋がる大きな橋渡しとなっています。

メディアコスモスにて制作。

発起人考案の朝顔の編み図で試作。

2021年8月 ACルームで編み物会

8月1日、ACルームにメンバーが集まり、朝顔を編んだ。久しぶりに編み棒を持った人、編み物は初心者の人もお互いに教え合いながら編んでいくうちに、次々と朝顔が完成していった。~ながラーの中に交流が生まれ、つながった瞬間だった。

ACルームにて制作。

カラフルな毛糸の朝顔が次々と出来上がった。

 

 

 

 

 

 

 

その後もメンバーの実家にあった古い毛糸を玉にしたり、母や子どもと一緒に編み物をする時間を過ごしたり、交流したり、編み物を通してつながりを感じながら活動の方向性を探る楽しい時間となった。

自宅での古い毛糸巻きをする親子。

できあがった新しい毛糸玉。

2021年9月 活動拡大へ

企画書を提出し、運営チームのコメントやアドバイスをもとに、9月下旬2回に分けて対面とオンラインでミーティングを行った。対面で久々に集まれたメンバーによって、みんなで編んできた朝顔をまずはACルームに展示すること、一般の方が編んでくださった朝顔を回収する箱を設置する、みなさんに朝顔を編んでもらう案内をWebやチラシに載せることなどが次々と決まっていく。どういうちらしを作るのか、朝顔をどう活かして行くのか、キッズルームのクッションに縫い付けるのは? スペースのデコレーションに使えないだろうか? やはり対面で集まるとオンラインでは出なかった様々なアイディアがどんどん出て、ワクワクしてくる。この頃葉っぱやツルも作った。ほかの~ながラーからもツルや、自宅で咲いた朝顔の写真の提供もあったり、毛糸de朝顔を通していろいろな形で人と人のつながりが広がっていくのを感じた。

10月16日ついに毛糸の朝顔を設置する専用棚が決まった! ACルームに集まったメンバーによって毛糸のツルに朝顔がつけられた。毛糸の朝顔が毛糸のツルに咲く様子は本当に可愛らしく、メンバーの笑顔とともに記憶に残っている。100円ショップで買ったワイヤーカゴに巻きつけたらステキな作品になった。朝顔には編んだ人の名前と住んでいる市町村を記した小さなタグがついている。クリスマスシーズンに向けてこの小さな朝顔が皆さんから集まって、温かい思いとともに冬の美術館に温もりを届けられたらいいねと和気あいあいとした雰囲気の中これからの活動の楽しみになった。

みんなが作った朝顔がつながった瞬間。

ACルームの棚に咲いた。

 

 

 

 

 

 

 

 一般の人からの募集に向けて活動開始。一般の人から制作してもらった毛糸de朝顔を送っていただいたり、持参していただいた作品を入れていただくための回収箱を作成した。事前にメンバーで作成した朝顔と、毛糸を使って装飾を施した。また、回収箱とチラシ、朝顔のポストカード、チラシなども一緒にACルームの棚へ設置し、一般からの参加者を募った。また、12月からはチラシも館内に設置していただけることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

Web上で毛糸de朝顔の募集が開始された。もともと「編む」という行為を通して人と人とのつながりを作っていこうというコンセプトで始まった舟。一般の方からの応募を待つが、なかなか集まらず。クリスマスに向けて編み物ワークショップができないか、明後日朝顔の名残のリースを毛糸の朝顔でデコレーションして美術館に展示するのはどうか、など色々なアイディアを出し合ったが、コロナの状況もなかなか落ち着かない中、残念ながらどれも実現にはいたらなかった。 しかしついに県内の方から朝顔の応募があったと、美術館スタッフから待望のメールが! 舟のメンバーにとって久々の明るいニュースであった。一般の方と毛糸の朝顔を通してつながれたことは、この舟の一つの小さな、しかし輝かしい成果となった。

一般の方からお送りいただいた朝顔やメンバーが編んだ朝顔や種やツルをなにかの形で発表できないか模索していた中、塔本シスコ展のお花が咲き乱れる作品を観て私たちの朝顔がシスコ展を盛り上げる一助になるのでは、と考えた。シスコさんの自画像からインスピレーションを得たメンバーが来館者が記念写真を撮るための「顔出しパネル」の試作品を作成。これを作りたい!!というワクワクした気持ちが盛り上がったが、活動の意義、コロナ禍での開催の難しさなどから断念せざるを得なかった… その後原点に戻って明後日朝顔の活動を来館者に伝えるために展示する方法を考えたが、場所の選定や展示方法などで行き詰ってしまった。なかなか進まない活動にいったん舟を解散することに決める。 なんだか寂しい印象になってしまったが、その時々の企画を考える時の充実した楽しいミーティングやチャレンジするメンバーの熱い気持ちは今後それぞれが他の舟で活動するためのパワーになった。

 

総括

 当初考えていた、一般の人からの毛糸で作った朝顔で、つながりを表現し館内のどこかに飾り、多くの人たちの目に触れて温かい気持ちになってもらいたい、ということは実現できなかった。しかし、結果ではなく過程に意味がある、ということがこの舟に参加して実感できた。それは、ACルームで活動していたときに声をかけてくれた~ながラーたちとの交流、家族と毛糸を通じて繋がった時間はとても貴重なもので、決して失敗の産物ではない。毛糸を通じて人とつながる、ということは十分実現できた、とメンバーは全員感じている。コロナ禍においての活動は、ミーティングはオンラインがメインで、実際に美術館で活動できた日は少なかった。本当は、ワークショップを開いて、たくさんの人とのコミニュケーションを図りたかったが、それはまた時期が来たら実現したい、と思っている。このアーカイブも、メンバーがリレー形式でつないで作成した。活動を振り返りながら、改めて懐かしさや温かい気持ちを心に蘇らせることができた。たくさん咲いた毛糸の朝顔は、一部は種となり、場所を変え、また誰かの心に温もりを与え られる日を、今もスタッフルームの片隅でしばしの休息をとって、待っている。