対話型鑑賞ってナンヤローネ鑑賞会〈対話型鑑賞ってナンヤローネ丸〉

「この舟のろう方式」による活動の記録を、「〜ながラー」の視点からふりかえり、アーカイブとして掲載します。
今回は<対話型鑑賞ってナンヤローネ丸>が実施した「対話型鑑賞ってナンヤローネ鑑賞会」企画の様子をお届けします。

【活動期間】2023年2月~3月

【メンバー】
1期:生方夕輝 鈴木昌泰 溝口美保
2期:高木尚子

舟を立ち上げたきっかけ

以前から対話型鑑賞って面白いなと思っていたし、実際に「〜ながラー」の活動を通して対話型の鑑賞会に参加したり、ファシリテーターをやったりした事もありました。やってみると「〜ながラー」はもちろん、一般参加者の方々もとても楽しそうにお話しをしながら作品を鑑賞していました。

それはそれで良いのだけれども、対話型鑑賞について「〜ながラー」のゼミを通して学んだりするうちに、「もっと具体的に対話型鑑賞の良いところを参加者の方々に伝えたい!」という野望がムクムク湧いてきました。ただ、同時に「それってちょっと野暮じゃない?一緒に鑑賞する事で、そこから感じとってもらうのがいいんじゃないの?!」とも思ったりして、なかなか舟の呼びかけができないまま、自分自身の「〜ながラー」の任期も終わりが近づいてきました。やった後悔よりやらない後悔の方が大きい気がして、3年間の活動期間の終了時期的にはギリギリでしたが、エイヤと思い切って「対話型鑑賞の推しポイントを「〜ながラー」がお薦めする鑑賞会をやりませんか〜」と声をかけてみました。

集まってくれた人数は私を含め4人と決して多くはないけれど、とても頼りになるメンバーでした。

舟が出来てから

舟メンバー4人のうち3人は「〜ながラー」1期、つまり3月いっぱいで任期が終わってしまいます。残されている時間が限られている私達は、まず日程を決め、そこから逆算し、しなければいけない事のスケジュールを決めていきました。

そのため、みんなでじっくり色々話し合ってという時間はたくさん取れない状況でしたが、それでも各自が思う対話型鑑賞の「ここがいいよね!」という点については共有する事が出来ました。

最初は、スライドを作成して各メンバーが自分の推しポイントを紹介する形式で計画しましたが、「勉強会っぽくならない方がいいのでは」というスタッフからのアドバイスがありました。また私達自身ももっと普通にお話ししたいという思いもあったので「〜ながラー」と参加者が丸く輪になってお話しするスタイルに変更しました。

2023年3月18日 イベント当日 

事前予約の方を含め、4名が参加しました。

受付後、お互いの自己紹介をして「〜ながラー」から対話型鑑賞についての簡単な説明、鑑賞時の注意点を話しました。そして早速、1作品目に木村荘八《パンの会》を鑑賞しました。

 

鑑賞1:木村荘八《パンの会》

ファシリテーター:鈴木昌泰

まず初めに1分間時間を取り、各自でゆっくりと作品を鑑賞してもらいました。

ひとつの作品を1分間かけてじっくり見ること、そのあとに他の参加者と会話をすることを考えながら鑑賞することは対話型鑑賞ならではの体験ではないかと思います。

会話をスタートすると参加者からは「楽器をもった男性が上の方をみている。視線の先に何かあるのかも。」「女性の顔色が暗い気がする。」「和と洋が入り混じっていて、ここが日本なのか、日本に興味がある人が集まるヨーロッパなのかわからない。」との話が出ました。
また、「酔っぱらって倒れている人がいる。」「扇子がある。」など、最初は気付かなかったけど、会話をしながらじっくり鑑賞することで気付いた部分への発言もありました。これも対話型鑑賞の醍醐味のひとつではないかと思います。
他にも「男性は楽しそうだが女性は楽しそうではない。」「何を話しているのか気になる。」などの意見が出ました。

《パンの会》は会話のきっかけになる要素が多い作品であるので、参加者も発言がしやすくウォーミングアップにもなり、対話型鑑賞ってこんな感じというのをまずは体験してもらえたのではないかと思います。

鑑賞をしてみて感想の共有時間

ACルームに戻り、参加者の方から実際鑑賞してみてどうだったか、お話を聞きました。他の人と一緒に観ることで、自分では気が付かなかった事に気が付けたり、他の見方があって楽しかったなどの意見がでました。まさに私たちの推しポイントと重なっていたので、「そうなんですよ〜」と嬉しい気持ちで推しポイントを早速紹介しました。

紹介した「〜ながラー」の対話型鑑賞推しポイントは以下のような内容です。

「1人では見えてこないものが見えてくる」
人と観ることで自分とはちがう視点で作品を観ることができ、違う物、色が観えたりすると新たな想像力が湧き出してくる。(高木)

「対話することで、深まる自分への理解」
自分の中だけだと、ぼんやりとしたままで終わってしまっていたかもしれない感覚が、対話をしながら鑑賞することで、感じたことがはっきりしたり、自分だけでは気が付かなかった新しい自分に出会えるかも。(生方)

「コミュニケーション力UP⤴につながる場」
感じたことを共有して認め合い受け入れる「場」である対話型鑑賞は、普段の自分のコミュニケーションについてふりかえるきっかけにできる。(溝口)

「特別な一枚になる体験」
対話型鑑賞で鑑賞した作品が気付けば特別な一枚に!(鈴木)

ここで、嬉しい事に途中参加の方が加わったので、早速2作品目の鑑賞に出発!
2作品目は守屋多々志《泊》を鑑賞しました。

鑑賞2:《泊》守屋多々志

ファシリテーター:溝口美保

途中参加の皆さんもすぐに作品鑑賞に集中してくれました。鑑賞前に感じたことを共有したり対話型鑑賞について話し合ったりしたことで、感じたことをはじめから積極的に話してくれました。
光の当たり方や色から「夜明けに見える」と言う方と「夕暮れに見える」と言う方がいらしてそれぞれの視点を全員で共有しました。
みんなで話すことによって視点を変えて観ることができたり、どちらに観えてもどちらも正解不正解がなくいろいろな見え方がある、という対話型鑑賞の私たちの推しポイントを体感していただけたりする時間になったのではないかと思い、とてもうれしくなりました。
個人的な反省点としては作品に近づきすぎてしまったなぁ、ということです。まだまだ修行が足りないな、と実感しました。
また機会があったらファシリテーターも参加者もやってみたいとさらに対話型鑑賞の楽しさのとりこになってしまいました。

2回の対話型鑑賞を終えてのふりかえり時間

鑑賞後再びACルームに戻ってお話をお聴きしました。

「今まで美術館といえば静かに観ないといけないと思っていたが、こうしてお話をしながら鑑賞してみるのもいいなと思った。」「自分1人だったらサッと観てすぐ次の作品に行ってしまっていたと思うけど、一緒に鑑賞する事で作品をじっくり鑑賞する事ができた。」「同じ絵でも人によって感じ方が違い、異なる意見を聴くのが面白かった。」など、対話型鑑賞を楽しんで頂けたのが伝わる言葉をいただけました!

今回参加いただけた方々に、「機会があったらまたぜひ対話型鑑賞に参加したい♪」と思っていただけたら幸いです。

執筆:「〜ながラー」生方夕輝(1期)、鈴木昌泰(1期)、溝口美保(1期)、高木尚子(2期)