開催レポート:「〜ながラー鳥瞰図 岐阜のアートコミュニケーションは、今ここ!」アートコミュニケーター3期募集トークイベント

11月3日(文化の日)「岐阜 ふるさとを学ぶ日」に、アートコミュニケーター3期募集トークイベント「〜ながラー鳥瞰図 岐阜のアートコミュニケーションは、今ここ!」を開催しました。〜ながラー、日比野館長、美術館スタッフが登壇し、これまでの活動を振り返りながら紹介しました。

日比野館長よりごあいさつ

秋といえば「芸術の秋」という言葉がありますが、稲穂や作物を収穫する「実りの秋」でもあります。
〜ながラーも取り組んでいる《明後日朝顔プロジェクト》では、春にタネをまき、夏に朝顔を育てて、秋に収穫祭を行います。朝顔は、その土地の日当たりや土壌、水によって育ち方が違います。長い夏をかけて育てられた朝顔には、秋になると、次に伝えるためのタネが実ります。
そういう視点でみると、春も夏も秋も、それぞれの芸術の視点があります。そして、秋は次につなげる、タネが実る季節です。そんな芸術のあり方を、継続していき、その土地になじんだ芸術を自分たちで作っていく、そんなアートをめざしていきたいと思っています。
今日は皆さんと、〜ながラーの活動を「鳥瞰」しながら、これからの道や、流れる先のイメージを共有していきたいと思います。

アートコミュニケーションプロジェクトとは?

初めに、2019年のリニューアルオープンよりスタートしたアートコミュニケーション事業について、担当スタッフの峰岸からプレゼンテーションしました。
アートコミュニケーター(愛称:〜ながラー)とは、アートを介して、人と人、人と作品、人と場所をつなぐプレイヤーのことです。
岐阜県美術館の基本理念である「美とふれあい、美と会話し、美を楽しむ」をともに実践するメンバーとして、現在47名が活動しています。1年の流れをふりかえりながら、コロナ禍によるオンラインミーティングの活用や、ナンヤローネ プロジェクトとの関わり、美術館から地域・社会へ展開していくプロジェクトの概要について紹介しました。

【Session 1】〜ながラーリレートーク - 私たちの舟は、今ここ!-

〜ながラーの活動の中心は、「この舟のろう式」によって自分たちのアイデアを育み、実現していくことです。
「舟」とは〜ながラーが集って結成するチームのこと。「こんなことがやってみたい!」と提案したアイデアに共感した人たちが集まり、ミーティングを開いて、自分たちで「アートコミュニケーション」の場を作っていきます。

ここでは6つの舟の〜ながラーに登場してもらい、日比野館長から各メンバーにインタビューをして、それぞれの活動を紹介しました。

●おしゃべりミュージアム丸
●放送部丸
●音×アート丸
●泉の小舟。
●ものづくり丸1班
●LINK・MEET丸
(↑舟の名前をクリックすると、各活動のページに移動します)

美術館にすでにあるもの(作品、建築、事業、人など)に、アートコミュニケーターが関わることで、新しい美術館の姿が発信されています。アートコミュニケーションプロジェクトは東京で始まり、岐阜の〜ながラーは三例目の取り組みです。まだまだこれからの取り組みなので、積極的にチャレンジを重ねてほしい、と日比野館長は語りました。

【Session 2】私のアートコミュニケーションは、今ここ!

〜ながラーの活動を支えているのは「学びと実践のサイクル」です。ここではまず、美術館スタッフがアートコミュニケーションプロジェクトを運営する視点と交えながら、「ながららぼ」について紹介しました。

●「ながららぼ」とは(第1回アーカイブ)

〜ながラーたちが作ってきた活動を分析したり、みんなで価値や発見をシェアすることから、また次の活動につながっていきます。7〜10月には、全7回のながららぼを通して、「美術館のたてもの・所蔵品の鑑賞を楽しむためには?」や「安心できる場づくりとは?」といったテーマに取り組んできました。各回の学びをデザインしてきたのは、東京でアートコミュニケーターとして活躍してきた担当スタッフの濱野です。

これらの実践的な学びをもとに、11/3の午後には「ナンヤローネ アートアクション キラキラ☆アートみつけ隊!」と「〜ながラーによる美術館ツアープロジェクト」を開催しました。

3人の〜ながラーは、午後のプログラムで活躍するメンバーです。それぞれがこれまでの体験と、関わる午後のプログラムについて紹介しました。

「今日は初めて、ファシリテーター(*鑑賞や制作に伴走する役割)に挑戦します!〜ながラーの活動を初まったばかりのとき、『まずはトライ&エラー』という言葉が印象的だったので、『とにかくやってみよう!』と思いました。作品を一緒に鑑賞することで、これから出会うみなさんと、色々な発見ができたらいいなと思っています。」(〜ながラー 松井さん)

 

「4月から〜ながラーになって、初めて対話型鑑賞を体験しました。絵は一人で見るものだと思っていたので、みんなと話しながら作品を見る楽しさがとても心に残っています。夏休みに、5歳の孫と所蔵品展を話しながら見ていたら、2時間もかかったんです!〜ながラー同士でもよくやるんだけど、とにかくおもしろい。午後のプログラムでも、新しい楽しみ方がきっと見つかると思います」(〜ながラー 加納さん)

 

「今日に向けて、美術館椅子ツアーを企画しました。美術館にくると、名作椅子がたくさんあるのが気になっていました。ただ見るだけじゃなくて、実際に座ったり、一緒にいる人と話したりできるようなツアーをやりたい、と思ったんです。」(〜ながラー 田中さん)

「ずっと美術館にいると、展示室、庭園、ホール…と分けて考えがちだけど、体験としては全部つながっている。天気がよくて庭園で気持ちよく過ごせた、とか、ロビーの椅子に座ったら思いがけない景色が見えた、とか。そういった人としての感性を大切に、美術館を体験してもらえるといい」と日比野館長。午後に行った各プログラムについては、それぞれのアーカイブをぜひご覧ください!

【Session 3】Tele-Pathy 離れていても、共感できること

コロナ禍で〜ながラーの活動が始まったとき、日比野館長から伝えられたのは「離れたところ同士だからこそ生まれてくるアートを、考えてみよう」という指令でした。今では美術館を拠点にしたプロジェクトに留まらず、これまで地域で継続されてきたアートプロジェクトへの参加や、他地域への展開など、美術館から外にアクセスしていく活動も増えています。

まずは、アートコミュニケーターとして活動するスタッフの中嶋より、「明後日朝顔プロジェクト」「こよみのよぶね」への〜ながラーの関わり方を紹介しました。

●明後日朝顔プロジェクト(外部リンク)
〜ながラーの活動がオンラインで始まったとき、それぞれが「在宅」で朝顔を育て、その様子を掲示板でシェアして交流していました。今年は在宅+美術館のアトリエ西側で生育に励み、10月末にはタネの「収穫祭」を行いました。昨年のタネは~ながラーの手によって、県内外の様々な拠点に渡っています。

●こよみのよぶね(外部リンク)
昨年から、干支の動物の形をした大きな行灯を〜ながラーでデザインし、来館者とともに制作しています。岐阜市で長く続いてきたプロジェクトに参加することで、地域の様々な人々の縁を感じた〜ながラーも多かったようです。

また、福井県立美術館にて岐阜県美術館の名品展を開催した際には、〜ながラー4名とともに《Such Such Such》の体験をお届けしました。
●福井県立美術館でナンヤローネ アートツアー 

岐阜県外でアートツアー を開催するのは初めてのことでした。参加した〜ながラーも「貴重な体験だった!」とふりかえります。
「参加者と作品を見るのは、実は初めての体験でした。」(〜ながラー 松本さん)
「ちょうど対話型鑑賞に興味が出てきたところで、美術館の外でも挑戦したいと思っていたので、手を挙げました。初めて訪れた美術館で、岐阜の作品や地域性を改めて感じました。」
「初めて、他の美術館に鑑賞や《Such Such Such》の体験を持ち込む役割を担えて、ラッキーだったなと思っています。」(〜ながラー 宮原さん)

日比野館長は、「~ながラーの活動はオンラインで始まり、逆流をこえながらの船出をいくつも体験してきたはず。だからこそ、時代性を反映したアートコミュニケーターが生まれてくると思います。アートを介したコミュニケーションとは、人、作品、場、社会とのコミュニケーションであり、常に変容していくもの。テレ(遠く離れたところ)をつなぐシンパシー(共感)がもてる同志を大切に、さまざまなつながりを育んでほしい」と語りました。

会場でお聞きいただいた皆さま、ありがとうございました!

「こよみのよぶね」づくり

同日、スタジオでは「こよみのよぶね」干支船の制作がスタートしました!~ながラーがデザインした牛の舟を、竹と和紙で制作します。
また、1年の思い出を短冊につづる「こよみっけ」も、多くの来館者の方に書いていただきました。

ふりかえり

1日の終わりには、参加した~ながラー全員が集合して、それぞれが体験した出来事についてふりかえりました。トークやプログラムでの気づきを通して、今日起こった「アートコミュニケーション」とはどのようなものだったか、自分や周りの人にとって大切だと思ったことは何だったか、共有する時間です。生き生きと楽しそうな表情で語る~ながラーの姿が多くみられました。