開催レポート:美術館たてもの&野外彫刻で『おしゃべり鑑賞会』

「この舟のろう式」による活動の記録を、〜ながラーの視点からふりかえり、アーカイブとして掲載します。
今回は<おしゃべり・ミュージアム丸>が開催した「美術館たてもの&野外彫刻で『おしゃべり鑑賞会』」の様子をお届けします。<おしゃべり・ミュージアム丸>のメンバーは4月より企画内容を準備し、5月にリハーサルを実施。その後、新型コロナウイルス感染拡大防止のための臨時休館により開催が延期となっていましたが、ようやく11月末に来館者を迎えたツアーを開催することができました。

〜ながラーによる開催レポート

美術館の魅力は展覧会だけではない。建物にも魅力がいっぱい。

~ながラーが注目した”建物の面白さ”をツアーとして企画してから、コロナ禍の影響もあって開催までに相当な日数が経過した。メンバーでテストを繰り返し、また~ながラーを対象に体験ツアーを行うなど、今回のイベント開催は、我々にとってまさに「満を持して」の気持ちであった。

  • 舟の名前 おしゃべり・ミュージアム丸
  • メンバー 田中、鈴木(昌)、杉山
  • サポート 松本

〇 開催日   2021年11月27日(土) ①11:00~12:00 ②14:00~15:00
〇 参加費   無料
〇 定員    各回5~6名程度にしていたが、①は事前予約で定員オーバーになったので、抽選で1グループ5名に決定。②は事前予約2名、当日参加3名、計5名
合計10名(大人のみ、内訳は男性2名、女性8名)
〇 役割分担  ①進行は杉山で、建物は田中さんと掛け合い、対話型鑑賞の彫刻は鈴木さん
②進行は田中さんで、建物は杉山と掛け合い、対話型鑑賞の彫刻は鈴木さん

美術館たてもの&野外彫刻で『おしゃべり鑑賞会』

・自己紹介を終えたら正面玄関を出て、マイヨール《地中海》付近から出発。
美術館は1982年11月開館、来年40周年を迎える。「周辺の緑と一体化した美術館」をコンセプトに、日建設計が担当、チーフは佐藤義信氏、2006年「日本建築大賞」を受賞した「京都迎賓館」の設計主任でもある。
岐阜県美術館は開館翌年に「中部建築賞」、岐阜市の「都市創美賞」を受賞。

・マイヨールの彫刻上部の長くて広い建物の軒、上部のタイル、池の水、植栽に注目。
太陽光線が水に反射して軒下に写り込む様子が美しい。これも計算されているのだろう。

・通常は使われないであろう軒下のタイル、「フェールセーフ」という考え方を紹介。
軒下のタイルは地震発生時に落下の危険性がある。しかし万が一落下したとしても、そこは池になっており人がいない。加えて周りに植栽を配備して、人が近づけないようにした二重、三重の防災対策が行われている。
この安全対策は我々の日常生活にも学ぶべきモノがありそう。

・玄関の庇にも注目。直線的な印象のある建物であるが、ここだけがアール状になっている。

・野外彫刻1点目はマイヨール《地中海》を鑑賞する。
参加者からは次のような感想を聞くことができた。
「女性版考える人」
「苦しそうな表情ではない。悩んでいるのではなくて考えている。」

・歩きながら、大成浩《風の影No.1》、杉浦康益《陶による石の群れ》、ルノワール《勝利のヴィーナス》、林武史《立つ人-月見台》などを見て、庭園を巡る。

途中で開館当時の樹木と現在の様子を比較するために、開館当初の写真を提示して見比べた。

・《アララトの舟》付近で建物外壁を見る。
上部は山型タイルで下部は平タイル。意外に気付かない。ぐるりと外壁が統一されている。
白っぽく見えるけれど、白色でもない。黒い横目地がスッキリと映える。
建物に当たる樹木の影の表情が美しく、野外彫刻のバックとしてもいい。

・野外彫刻2点目は小清水漸《アララトの舟》を鑑賞する。
参加者からはこんなコメントがあった。
「設置された当初はどんな色だったんだろう?」
「中の水が溢れ出してこんな模様になった?」
「石の上に乗っていいなんて思わなかった。」

・正面玄関へ戻る。ここで美術館の天井高について、説明する。

「天井の高さの違いにご注目ください。1階にすべての展示室があり、上下階への移動がないので、天井の高さを場所ごとに変え空間に変化を与えています。低い風除室から入り、高く天窓からの自然光もある美術館ホール、最も高い多目的ホールとその違いを楽しんでください」

・中へ入り70mの美術館ホールを眺める。トップライトの天窓、灯りとりに注目。光の降り注ぐ様子が面白い。自然光が所々で影を落とし、影がリズムのようだ。
窓がマイヨールの《地中海》の額縁のようで、春夏秋冬何れも美しい。冬景色の写真を提示して、季節による雰囲気の違いも伝えた。

・多目的ホールへ入る。
壁のザラザラ感に注目。見上げれば十字のトップライトが珍しい。高さは10.8メートル。
彫刻の上部など8か所から自然光が取り入れられている。円筒形の柱が4本。
ミケランジェロの模刻が3点、イタリアンバロック様式のパイプオルガンは、オルガン技師の辻宏氏の作品。辻氏の工房は白川町にある。ちなみに、庭園に彫刻がある林武史氏のアトリエも同じ町にあるそうだ。

資料によれば、辻オルガンは生涯82台作られており、県美と県のサラマンカホール、そして白川町ホールにあり、あとは全部が教会のようだ。

 

・美術館にある椅子に注目 ここでは2点だけ紹介する。
1点目は「バルセロナチェア」、1929年バルセロナ万博のドイツ館に置かれたもの。建築家ミース・ファン・デル・ローエの作品で、フレームのクロームメッキ、上質な革張り、X字の構造、「神は細部に宿る」との名言がある。
2点目は「ダイヤモンドチェア」、イタリア生まれのハリー・ベルトイアの作品。ワイアーのみで構成されている。「使われる芸術品」とも呼ばれる。

・ショップ前にて、皆さんにツアーの感想を伺う。
「今まで野外の彫刻を見る機会がなかったので、いい機会だった」、「これまで建物に目を向けることが無かった」、「以前からこういう催しに参加したいと思っていた」、「楽しく見て回る事が出来た」、「~ながラーに応募したいと思って参加した」など。

   

執筆・杉山正彦(〜ながラー1期メンバー)

美術館へ何度も来ている人でも、建物には目が向けられていなかったようです。
今まで「建物ツアー」的な催しはやっておらず、野外彫刻とのセットも良かったと思います。
これから季節によっては、定番プログラムとしても面白いかもしれません。