〜ながラーインタビュー vol.2

人と人、人と作品、人と場所をつなぐ活動に取り組むアートコミュニケーター「〜ながラー」。2020年度からスタートし、現在では約50名が活動しています。
初年度の終盤に行った「実践ゼミ2〜4  舟のおもしろい公開日誌をつくろう」では、〜ながラー同士でペアインタビューを行い、その内容を書き起こしてもらいました。

コロナ禍によるオンラインミーティングでの活動や、「この舟のろう式」によるオリジナルな企画のあゆみ、世代や職業が異なる人たちとのコミュニケーションなど、さまざまな体験談が綴られています。
「〜ながラーって、こんな人たちなんだ!」と出会うような気持ちで、読んでみてください。

インタビューの公開にあたり、実践ゼミの講師である多田智美さん、妹尾実津季さん(株式会社MUESUM)に監修していただきました。

わたしが考える2020年度「~ながラー」ハイライト ~ひらっち編~|平岡靖教さん

聞き手・文:やまだけいこ 

 「コロナに翻弄された一年だった…」

低音美声でそう語るのは、ひらっち、こと平岡さん(30代男性)。この言葉は彼一人だけではなく、~ながラー全員に共通する思いであろう。

会社員である平岡さんは、2019年に行われたあいちトリエンナーレでのガイドボランティア経験を生かして~ながラーとして、もっと多くの人を岐阜県美術館に招くような活動をしたかった、と悔しさをにじませる。

そんな一年の中でも、彼の心に強く残っているのは「妄想アート丸」と「放送部丸」での活動である。

~ながラーたちが企画した活動は「舟」と呼ばれているが、「妄想アート丸」の舟は、当初基礎ゼミのなかで、実験的に構成された舟であった。一つの目的を目指してメンバーが集う舟とは異なるため、「年齢層も異なるメンバーの中で唯一の男性として、お互いの理解を深めてくのに時間がかかり、大変でした」、と彼は語る。しかし、他の~ながラーたちの援助を得ながら、そのような苦労を乗り越え、「妄想アート」というオンラインイベントを完成させることができた。「道のりは長かったが終わってみればいい思い出になった」、という彼の言葉には安堵感だけでなく達成感も強く感じられた。

「放送部丸」の活動では、彼は~ながラーたちが鑑賞する様子を収録した「~ながラジオ」の音声編集担当という重要な役割を担っているが、家での作業が多く、仕事やその他の活動にもそれほど支障はなかったという。

こうした~ながラーとしての活動を通して彼が得たものは何か?

「仲間たちですね。この活動がなかったら知り合えなかった人たちです。特に、舟の中では放送部丸のチームワークは一番ではないかと思います。」

コロナに翻弄された2020年度をふりかえり、彼は「今まで誰も目を向けなかったようなものに光を当てられる活動ができたら…」と今後の展望を語った。

美術館の可能性|ゆかっちさん

聞き手・文:しまけん

 福祉関係の仕事を“しながら”、岐阜県美術館のアートコミュニケーター「~ながラー」の1期メンバーとして、アートと人をつなげる活動に取り組むゆかっち。仕事柄 “障がいのある子どもたちと美術館とのつながり”に関心を寄せる彼女には、「美術館をより砕けた場に、そして子どもたちが楽しめる場にしたい」という想いがあった。

「障がいのある子どもたちにとって、美術館は「自由に楽しめない不自由な場所」。これは、ゆかっちが日頃から感じていることだ。「静かにしないといけない」という窮屈さは、目に見えない壁(バリア)となり、感受性豊かな子どもたちと美術館との間に距離感を生む。「子どもたちがアートに触れることで変化が生まれ、アートと共に美術館も楽しめる場になってほしい」。そう願うゆかっちは、職場とは異なる環境(美術館)へ飛び込むことによって、障がいのある子どもたちと美術館をつなぎたいという想いを胸に、岐阜県美術館のアートコミュニケーター「~ながラー」になった。

ゆかっちが~ながラーになり、早1年。多くの仲間に恵まれた彼女の志は、今も色褪せない。「一人ではできないことも、~ながラーという仲間と一緒に考えていきたい」。彼女は、何時に無く真摯な眼差しで語った。

〜ながラー1年生のチャレンジ|近藤美紀さん

 

聞き手・文:青木三奈

 〜ながラーを始めて、1年。いろいろあったなぁと、懐かしそうに空を見上げ微笑む近藤さんにお話を伺いました。

率直にこの一年どうでしたか?と感想を伺うと、「参加して良かった」と満面の笑みで答えてくれました。〜ながラーとの初対面は、ZOOMのパソコン画面。操作に慣れない中、初めて会う人達。最初は自分の思っている事もうまく発言できませんでしたが、活動を深めていく中で、自分の意見をちゃんと聞いてくれる仲間と出会い、前より想いを伝えられるようになりました。そして、活動を重ねていくにつれ生活に“イロドリ”が生まれ、自分自身にも変化を感じたそうです。

印象に残った事を聞くと、「いっぱいありすぎて悩むー」と言いながら、嬉しそうな表情を浮かべて語ってくれました。干支を象った大きな行灯を屋形船に乗せ、長良川に流す企画「こよみのよぶね」では、デザインが干支の舟に採用され、また、人々が今年を振り返り、その想いを書き込んだ短冊を舟に届ける“巫女”にも挑戦しました。「〜ながラー以外でも新しい仲間と出会い、一人じゃないからやり遂げられました。「ワンアート丸」では、一般のお客さんにオンラインで、ヒントを頼りに美術館の作品の絵を描いてもらう「妄想アート」の企画を開催。参加者の笑顔に勇気をもらうと共に、喜びを感じたそうです。他に、ロートレック展を題材に、ムーランルージュでの妄想会話を録音して美術館で流し、まさか自分がやると思ってもみなかった、コスプレも披露しました。最後に、「岐阜県美術館放送部丸」では、美術館の作品をみんなで鑑賞し思ったままを話す「〜ながラジオ」をYouTubeで配信しました。ここでも、初の動画編集に挑戦し、いろんな人に岐阜県美術館を知って欲しいという想いをカタチにしました。

このように一年を振り返ってくれた近藤さん。最後に〜ながラーの活動を一言で言うと?と質問すると、笑顔で「チャレンジ!」と答えてくれました。これからも近藤さんの活躍が楽しみです。