〜ながラーインタビュー vol.4

人と人、人と作品、人と場所をつなぐ活動に取り組むアートコミュニケーター「〜ながラー」。2020年度からスタートし、現在では約50名が活動しています。
初年度の終盤に行った「実践ゼミ2〜4  舟のおもしろい公開日誌をつくろう」では、〜ながラーでペアインタビューを行い、その内容を書き起こしてもらいました。

コロナ禍によるオンラインミーティングでの活動や、「この舟のろう式」によるオリジナルな企画のあゆみ、世代や職業が異なる人たちとのコミュニケーションなど、さまざまな体験談が綴られています。
「〜ながラーって、こんな人たちなんだ!」と出会うような気持ちで、読んでみてください。

インタビューの公開にあたり、実践ゼミの講師である多田智美さん、妹尾実津季さん(株式会社MUESUM)に監修していただきました。

“もの”の難しさと大切にしていること | 宮原紀子さん

聞き手・文:ひろろ

 今回インタビューに応じていただいたのは宮原さんだ。宮原さんは“のこてぃん”の愛称で慕われており、話を伺っているこちらまで元気がもらえるような明るい方だ。

まず、~ながラーに応募した理由を伺ってみたところ、新しいことに挑戦したいという気持ちと当時習っていた水彩画の影響があるようだ。「水彩画を習って、ものの見え方が変わった。この感覚が変わる感じをみんなにも体験してほしい」と声に熱がこもる。

宮原さんはこれまでイロドリ丸、音×アート丸、放送部丸、DIY造船所など様々な舟に乗船してきた。それぞれの舟の雰囲気はバラバラだったようで、きっちりと議題を決めてミーティングを行う舟もあれば、自由に思ったことを話す舟もあったという。その中で宮原さんが感じたことは、“もの”をつくる難しさだという。「全員の意見を取り入れて具体的なかたちのあるものをつくることはできない。採用されない意見も出てきてしまう」と目を細めて語ってくれた。

宮原さんに大切にしていることを伺ったところ「自分のやりたい気持ちをどうやって実現させる方向に向かわせるのか。そのためには(サンプルとなる)具体的なかたちとなるものを作ってみんなに提示することが大事だと思う」と真剣な目をして答えてくれた。

今は音×アート丸で楽器制作をからめた新たな取り組みを模索しているとのこと。「仕事や家事で忙しく、コンスタントにやっていくことは難しいところもあるが、“感覚が変わる感じ”を皆さんに体験してほしい」と弾んだ声で話してくれた。

 

 

「~ながラー」に出会えてよかったです! | 藤井理恵さん

聞き手・文:髙垣和美

 普段は、森のようちえんや学童で子ども関係のお仕事をしている藤井理恵さん。もともとチラシを集めることが好きで、よく映画のチラシなど集めていたそう。そんな藤井さんは、たまたま「~ながラー」のチラシと出会い、「おもしろそう!」と、興味をもって応募。

藤井さんが振り返る~ながラーでの印象的な活動は、「蜘蛛の巣丸」と「ロートレック展」での活動です。「はじめは、週1回Zoomで打ち合わせをするくらいだったけど、だんだん活動が広がっていきました。『作ろう!蜘蛛の巣at Home』は、参加者に身近な素材で蜘蛛の巣をつくってもらうワークショップでした。いろんな素材で沢山の方が参加してくれて、いっぱい蜘蛛の巣が集まってきて。新しい発見がありましたね。」と、声を弾ませて話してくれました。「ロートレック展では、ムーランルージュのカフェの雰囲気を再現した展示をホールに作りました。「~ながラー」の皆さんの画力がすごくて、とても完成度が高かったんです。カフェの展示も好評で、ホールでコーヒーを飲んで休憩する来館者にとても評判がよかったですよ。」彼女は、物作りをする活動がとても楽しかったようです。「そうそう、美術館内でのパネル紹介で、私が蜘蛛の巣を持って写っているのに友達が気がついて、LINEが来たんです! 『これなに?』何してるの?』って。~ながラーの活動のことをいろいろ話したら、『すごいね!』って、驚いていました。最近びっくりしたことです」と、いう彼女の顔は笑顔でとても嬉しそうでした。

「いろんな世代の人と出会うことができて、意見を交わしたり、物作りをしたりできる~ながラーの活動に出会えて本当によかったです。」とも話してくださいました。今後もまた、新しい舟の活動で生き生きと活動する姿が見られることでしょう。今後の活躍に期待しています。

 

美術館との付き合い方、それぞれ| 田中光城 さん

聞き手・文:杉山正彦

 田中光城さんは、会社員で建築士である。~ながラーに参加したのは、あいちトリエンナーレでボランティアをやっていたとき、「アートコミュニケーター募集」のチラシを目にしたことがきっかけだった。

はじめての活動となる打ち合わせは、Zoomを使ったオンライン。自己紹介に続き、自分の興味のあること、やってみたいことなどを各自が発表し、書き出して、その場に並べた。私が興味をもっているものとして書き出した7~8つのワードアイテムのなかに、「美術館所蔵品」があった。このワードに興味を持っているメンバーは、私を含めてメンバーは4人。そのなかに、田中さんがいた。経験や収蔵作品から思い描くものは、4人さまざまであったが、対話型鑑賞法で、来館者と一緒に美術館を楽しみたい、という考え方は共通していた。

それでは、そんな田中さんに話を聞いてみよう。

Q. この活動をはじめて、変わったことは?

A. 休日の家事のやり方、余暇の活用、あるいは、まちづくりなどに目が行くようになりました。時間の遣い方や仕事以外の関心事が増えてきました。また、~ながラーの活動に参加した、ということ自体が良かったです。

Q. これまでの活動のなかで、一番印象に残っていることは?

A. 昨年の「アートしながラー」のイベントでの、「おしゃべり・鑑賞会」ですね。お客様を相手にしたはじめての対話型観賞の実践でしたが、緊張しながらも何とかできました。うまくいくようになるまでには、何度も実践回数を重ねる必要があり、なにより慣れることが大事だなと思います。

Q. 今後やりたいことは?

A. 美術館の建物に限らず、隣接する県図書館も含めて「建築ツアー」的なものに挑戦してみたいです。

Q. 田中さんのご自宅から美術館までは遠いから、大変ですね。

A. 休日は家事手伝いもソコソコに、岐阜に通っています。妻からは「そんなに楽しいことなの?」と言われることも。子どもたちは、応援してくれていますよ。

ここで賞味期限切れの我々夫婦のことを話す。「我が家なんて、亭主元気で留守がいい」と、あのまんまだ。「今日は美術館へ行かないの?」と聞かれる始末だ。田中さんが少しだけ羨ましいような気分。ちょっと複雑な気持ちでインタビューを終えた。