走泥社再考 前衛陶芸が生まれた時代展示室3
走泥社再考 前衛陶芸が生まれた時代

2023年12月19日~2024年2月18日

岐阜県美術館ではこのたび、「走泥社再考 前衛陶芸が生まれた時代」を開催します。

「その時代、陶芸界に何が起こっていたのか。」

1948年に八木一夫、叶哲夫、山田光、松井美介、鈴木治の5人で結成された陶芸集団「走泥社」は、その後、同人の入れ替わりを経ながら半世紀にわたり、日本の陶芸界を牽引してきました。彼らの活動を見渡した時、その革新性が特に前半期に認められることから、本展では、走泥社結成25周年となる1973年までを主な対象とし、同時期の四耕会など時代を担ってきた当時の他の作家作品も加え、前衛陶芸が生まれた時代を振り返ります。

開催概要

タイトル 走泥社再考 前衛陶芸が生まれた時代
開催期間 2023年12月19日(火)~2024年2月18日(日) 10:00~18:00

※休館日:毎週月曜日(祝・休日の場合は翌平日) 2024年1月9日(火)、2月13日(火)
年末年始 2023年12月25日(月)〜2024年1月4日(木)
※夜間開館:2024年1月19日(金)、2月16日(金)は20:00まで開館
※展示室への入場は閉館30分前まで

観覧料 一般1000(900)円 大学生800(700)円
高校生以下無料、()内は20名以上の団体料金
※身体障がい者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、特定医療費(指定難病)受給者証の交付を受けている方とその付き添いの方(1名まで)は無料
会場 岐阜県美術館 展示室3(岐阜市宇佐4−1−22)
主催 岐阜県美術館、中日新聞社
特別協力 国立工芸館
企画協力 京都新聞

 

■展覧会の見どころ

解散後初となる本格的な走泥社回顧展

走泥社活動期間の前半に限るとはいえ、八木一夫、山田光、鈴木治という創立メンバーと共に活動した同人による走泥社の多様な活動を紹介する初めての試みです。走泥社は同人の増減を繰り返しながら活動を続けてきましたが、今回は1973年まで一時期でも走泥社に参加した作家の内、32名の作品および関連資料を紹介します。

【本展出品の走泥社作家】

門井嘉衛、加藤達美、金ヶ江和隆、叶敏、叶哲夫、川上力三、河島浩三、熊倉順吉、小西晴美、近藤清次、笹山忠保、佐藤敏、里中英人、鈴木治、高野基夫、田辺彩子、辻勘之、寺尾恍示、鳥羽克昌、中島清、林秀行、林康夫、人見政次、藤本能道、益田芳徳、緑川宏樹、宮永理吉、三輪龍作、森里忠男、八木一夫、山田光、吉竹弘

 

パブロ・ピカソやイサム・ノグチ。同時期に前衛陶芸活動を展開した四耕会の作品も!

当時の陶芸界に影響を与えたパブロ・ピカソやイサム・ノグチの作品、また、同時期に前衛陶芸を牽引した四耕会、そして陶彫の辻晉堂や「現代国際陶芸展」(1964年)の出品作家など、走泥社以外の団体や作家も一部交えつつ、前衛陶芸が生まれた時代を振り返ります。

【本展出品の四耕会作家】

宇野三吾、岡本素六、清水卯一、鈴木康之、中西美和、林康夫、藤田作、三浦省吾

【その他本展出品作家】

辻晉堂、森野泰明、柳原睦夫、イサム・ノグチ、ケネス・スターバード、ニーノ・カルーソ、パブロ・ピカソ、ハワード・コトラー、ハンス・コパー、ピーター・ヴォーコス、ルース・ダックワース、ルーチョ・フォンタナ

■展覧会構成

第1章 前衛陶芸の始まり 走泥社結成とその周辺(1954年まで)

敗戦により、価値観が大きく揺らいだ時代、戦後まもない京都で叶哲夫、鈴木治、松井美介、山田光、八木一夫の5人が「走泥社」を結成しました。走泥社は特別な規則や方向性を有した団体ではなく、多様な考えを持つ人材が集まり、前衛という意識のもとで活発な制作活動を行いました。陶芸界の伝統的な規範から距離をとりつつ、外的な影響を受けながら自身の心象風景を表現するところに、あるいは陶磁器が持つ造形要素を現代の造形言語に昇華させようとしたところに当時の走泥社の前衛意識をみてとることができます。同時期に活動した「四耕会」や当時の陶芸家の仕事に大きな影響を与えたパブロ・ピカソやイサム・ノグチの作品もあわせて展示します。この時期の前衛陶芸界は、陶芸家たちが器物形態をいかに現代的な立体造形として自立させていくのかを模索する時期と言えるでしょう。

第2章 オブジェ陶の誕生とその展開(1955―1963年)

50年代後半になると、走泥社以外で活動していた有力な陶芸家が走泥社へ参加し、前衛陶芸家集団としての走泥社の骨格が固まっていきます。当時のメンバーの写真なども展示してあり、活動が活発化していたことがうかがえます。走泥社同人を中心に「時代の意識」に根差した陶芸作品を展示するとともに、走泥社同人と交わりながらも陶彫を制作し、立体と空間という彫刻の造形言語を追究した彫刻家の辻晉堂の作品も紹介します。

第3章 「現代国際陶芸展」以降の走泥社(1964―1973年)

「現代国際陶芸展」は、東京オリンピック開催を記念し全国4会場を巡回して行われた日本で初めて開催する本格的な国際陶芸展でした。走泥社にとって大きな転機となる出来事となり、彫刻家の柳原義達は「藝術新潮」に「日本陶芸の敗北」というエッセイを寄稿するなど日本の陶芸界に対しての自己変革を促すものとなりました。
この時期の走泥社は、草創期の同人と若手作家とがバランスよく併存し、最も充実した時期でした。心象風景の表象から始まった陶によるオブジェが、さらなる自己検証を行うことにより「前衛性」が相対化し、個々人の造形表現として成熟と拡張を見せ始めた時期でした。