リニューアルオープン特別企画2「セカンド・フラッシュ」展の出品作品を鑑賞するアートツアーを開催しました。
今回は出品作家の平野真美さんが「信頼できない語り手」をテーマに、オリジナル鑑賞プログラムを企画しました。

開催概要

開催日:2019年12月22日(日)
時間:14:00〜15:30(90分)
会場:岐阜県美術館 多目的ホール、展示室3
対象展示:リニューアルオープン特別企画2 セカンド・フラッシュ
対象作品:Nadegata Instant Party(中崎透+山城大督+野田智子)
対象作品:《Parking Promenade》
対象作品:平野真美 《蘇生するユニコーン》《手のためのタピスリー》
対象作品:松本和子 《いぶきがきらり》
対象作品:宮田篤+笹萌恵 《ペンびぶんフレンドクラブセンターぎふ》

アートツアーの内容

「信頼できない語り手」とは、小説などで用いられる手法。書かれている前提条件を鵜呑みにしてしまう読者の認識を逆手に取った叙述トリックです。展覧会の挨拶文や、作品を制作した作家の言葉を「信頼できない語り手」と捉えて作品を鑑賞すると、どのようなみえ方がうまれるのか。平野さんはそのようなアイデアから、今回のアートツアーを考えました。

展覧会の会場では、作品の解説などが書かれた印刷物(ハンドアウト)を配布していることがあります。「セカンド・フラッシュ」展でも、各出品作家の言葉などを掲載したハンドアウトを作成し、会場で配布していました。
このアートツアーでは、そのハンドアウトの解説部分が白紙になっている用紙が参加者に渡されます。参加者は、作品を鑑賞して想像した架空の設定や物語をその用紙に書き込み、オリジナルのハンドアウトを作成します。

ツアーの流れ

グループで作品を鑑賞する

4つのグループに分かれてアートツアーに出発!
作品からどんな物語を想像したか、グループで交流しながら鑑賞します。

用紙に書き込む

グループ内で想像した物語や架空の設定を用紙に書き込んで、オリジナルのハンドアウトを作成します。

作成したハンドアウトを交換する

作成したオリジナルハンドアウトを他のグループと交換します。
他のグループは作品からどんなことを想像したのか、オリジナルハンドアウトを見ながら改めて作品を鑑賞しました。

オリジナルハンドアウトに書かれた内容(抜粋)
  • Nadegata Instant Party(中崎透+山城大督+野田智子)《Parking Promenade》
    このさくひんは「いのちの道」。車が生まれる前、母親のお腹に入る前にこの道を通る。この道で18個のことを学んでお腹に入り、車として生まれる。
  • 平野真美 《蘇生するユニコーン》《手のためのタピスリー》
    作者は男性。再生、人体をテーマに作品を制作していたが、 批判を受けて、ユニコーンの制作に切り替えた。ユニコーン作品は評価を得て、それ以降作者はユニコーン作品に注力する ようになった。作者は手先が器用だったが、ある時障がいを負い、思うように制作できなくなっていく。それでも作者はユニコーン作品を制作し続けた。壁に展示されているのは、晩年の作品である。
  • 松本和子 《いぶきがきらり》
    「巨人のお絵描き」。10mの巨人が裸で水浴している姿。 地中海の地図を合体させている。
  • 宮田篤+笹萌恵 《ペンびぶんフレンドクラブセンターぎふ》
    題名は《お花し畑》です。山にすむ鳥「ぎ」と「ふ」は文字を作っている。山には沢山の葉があり花にお話の花が咲く。

スタッフの振り返り

「展示作品から架空の物語を想像する」という平野さんの発想に、最初はただただ驚きました。
参加者はどんな反応をするだろう、架空の物語と言われてすぐに書けるのだろうか…。
開催までドキドキしていましたが、平野さんの丁寧なレクチャーのおかげもあり、みなさん戸惑うことなく、むしろこの特別な鑑賞プログラムを楽しんでいる様子が見られました。
参加者のみなさんが書いたハンドアウトの内容は、「架空の設定や物語」ではあっても、作品から受け取った印象をもとにした、決して嘘ではないそれぞれの真実が含まれた物語だったと思います。
アーティストによる新しい作品鑑賞の形を示すアートツアーとなりました。

平野さんは2018年の「アーティスト・イン・ミュージアム(AiM)」にて、岐阜盲学校で滞在制作や図工美術の授業を行いました。岐阜盲学校での活動を通し生徒たちとふれあう中で、視覚優位の生活に疑問を持つとともに「見えていない世界」に思いを馳せたと言います。その体験が「みる」ことの意識を深める今回のアートツアーにも繋がりました。