1985年度(昭和60年度)企画展

郷土作家シリーズ3
長谷川朝風展 ―郷土の日本画家―

会期:昭和60年4月19日(金)~5月19日(日)
主催:岐阜県美術館
出品点数:142点

本展は、画家としての長谷川朝風の再評価の試みであった。朝風は、1901(明治34)年、安八郡墨俣町(現・大垣市)生まれの画家。京都市立絵画専門学校(現・京都市立芸術大学)に学び、1931(大正2)年、光と影のコントラストの強い印象派風の洋画から転向した水墨画家、近藤浩一路に師事。また1932(昭和7)年、山元春挙門下に入る。1956(昭和31)年、主として院展に出品、文楽を題材にした大作《絃》によって、日本美術院賞次賞・大観賞を受賞した。しかし朝風画の最良の本質は、形成期に受容した京都画壇の流れと、浩一路の写生画の影響とによって、早い時期に決定されていたと思われる。特に、彼が絵専に入る少し前に結成された国画創作協会を中心とする日本画における新しいマニエラの追求の気運に、若い朝風は当然巻きこまれたのである。そして、彼のこの形成期に登場したのが、震災を機に東京から転居してきた浩一路であり、この出会いが、何の変哲もない写生風景に独創的な視点を賦与しようとした朝風の創作の姿勢に最大の寄与をなしたことは疑問の余地がない。

開館3周年記念展 ルドンをめぐる巨匠たち

会期:昭和60年10月1日(火)~11月10日(日)
主催:岐阜県美術館
出品点数:264点

本展は、開館3周年を記念して、当館コレクションの中核をなすオディロン・ルドンの初の展覧会として企画された。象徴主義の代表的な画家であるルドンの芸術が、いかにして形成され、後世にどのような影響を及ぼしたか、また、彼の、ひいては象徴主義の主張が、いかなる意味と価値を持つかを明らかにすることを目的とするものであった。
詩の分野に始まった象徴主義は、眼に見えない人間の内面を、象徴もしくは暗示という方法を用いて視覚化するものである。自然の忠実な再現を目指した印象主義に行きついたヨーロッパ500年の写実絵画は、ここに至って“写実から表現”への一大変化を向かえることになったのである。

今日の造形3
世界現代ガラス展 ―光と幻想の結晶―

会期:昭和61年1月5日(日)~2月11日(火)
主催:岐阜県美術館、朝日新聞社
後援:外務省、文化庁、朝日イブニングニュース社
企画協力:北海道立近代美術館
出品点数:151点

本展は、北海道立近代美術館の企画協力により、世界各国の現代ガラスをコンクールによって一堂に集めたもので、招待作家部門、コンクール部門の2部門からなるものであった。アメリカ、カナダ、ヨーロッパ、アジア、オセアニアから17か国65作家が151点を出品。現代ガラスの現況と動向を一望することができた。また、アメリカや、ヨーロッパとは異なった過程を歩んできた日本のガラス造形を、改めて世界的視野で眺めることができた。

生誕100周年記念 川﨑小虎展 ―清らかな日本画の巨匠―

会期:昭和61年3月2日(日)~23日(日)
主催:岐阜県美術館、日本経済新聞社
出品点数:103点

明治・大正・昭和の三代にわたって日本画に清風を送った川﨑小虎は、1883(明治16)年に岐阜市に生まれた。1986(昭和61)年がちょうど生誕100年にあたり、それを記念して開催した。本展は、1912(明治45)年の初期から1976(昭和51)年の絶筆までを広く網羅し、各時代の代表作62点と「水墨画の世界」として昭和初期の画仙紙にコンテで描いた乾墨画や天衣無縫な画境を示す水墨画など41点を展観した。