IAMAS ARTIST FILE #10展示室2
IAMAS ARTIST FILE #10 繭/COCOON:技術から思考するエコロジー

2025年1月10日~3月9日

岐阜県美術館ではこのたび、「IAMAS ARTIST FILE #10 繭/COCOON:技術から思考するエコロジー」を開催します。

イタリア出身の哲学者E. コッチャによれば「繭」とは「生まれたあとの卵」。テクノロジーについての近代的な考えを反転させるこの思想は、新しい技術哲学を紡ぎます。クワクボリョウタ、J. E. ボワシエらによる豊かな芸術表現を通じて、エコロジー問題にアプローチします。

リンク:IAMAS ARTIST FILE #10 繭/COCOON:技術から思考するエコロジー

開催概要

会場 岐阜県美術館 展示室2
開催期間 令和7年1月10日(金)~3月9日(日) 10:00~18:00

※夜間開館:1月17日(金)、2月21日(金)は20:00まで開場

※展示室の入場は閉館の30分前まで

休館日 毎週月曜日(祝・休日の場合は翌平日)
観覧料 一般340 円(280 円)、大学生220 円(160 円)、高校生以下は無料
※( )内は20 名以上の団体料金
※所蔵品展示の観覧券でご入場いただけます。
※身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、特定医療費(指定難病)受給者証の交付を受けている方とその付き添いの方(1名まで)は無料
主催 岐阜県美術館、情報科学芸術大学院大学[IAMAS]
リンク IAMAS ARTIST FILE #10 繭/COCOON:技術から思考するエコロジー

アーティストについて

ジャン=ルイ・ボワシエ
《 (digital) Soba Choko》(2019-)

ジャン=ルイ・ボワシエ Jean-Louis BOISSIER |1945-

アートにインタラクティブ性を導入した先駆者の一人として、80年代以降に普及したニューメディアを手段に新たな芸術体験を追求してきた。本展では「蕎麦猪口」という日本的な器について、その文化性・芸術性・技術性を問うプロジェクト《(digital) Soba Choko》の研究成果を展示する。タイトルの「digital」は「数」と「指」にかんする両義的な意味をもつ。本作は、このオブジェが伝統的に人々の手技による陶器として作られると同時に、その截頭錐体(せっとうすいたい)の寸法が安定した比率(高さ:底辺:幅=6:6:8)をもつことに着目する。わたしたちが「技術」と呼ぶもの―「テクノロジー」と工芸的な技芸―は、その根源において、わたしたちのものづくりにいかに関わるのか。

クワクボリョウタ《風景と映像》 (2016)
(撮影:椎木静寧 写真提供:宇都宮美術館)

クワクボリョウタ KUWAKUBO Ryota |1971-

2010年の《10番目の感傷(点・線・面)》に端を発する光と影による表現は、《Lost》シリーズとして展開し、これまで世界中で実現されてきた。日用品や鉄道模型によって形作られるこのシリーズは、作家による特定のアイディアに依拠しながら、その作品群は唯一の形にとどまらず、無数のヴァリアント[異形]が展開されてきた。あるアイディアによって作られた作品は、作品をとりまく環境そのものをダイナミックに変化させ、それ自身もまた変容することをやめない。展覧会のエコロジーとは何か、作品を生態学的に探求するとはいかなることか。クワクボは、本展をこうした問いへの応答の契機と解釈し、ヴァリエーションの制作に挑む。

西脇直毅《赤色のへびとネコ》(2023)

西脇直毅 NISHIWAKI Naoki |1977-

西脇直毅の絵画世界では、微小なネコが増殖し、数えきれないほど集まって流れを成す。ネコは異なる動物と出会い、あるときは渦を巻き青海波のような文様と有機的に接続しながら、紙面を埋め尽くす。こうしたアクションは、人類の伝統的な表現としての「文様」の生成になぞらえることができる。文様は特定の意味を帯びた単なる装飾にあらず、世界とわたしたちを直接的に結びつける。2024年から新しく取り組む《刺青の女》シリーズでは、西脇は使い慣れたボールペンのグリップを離れ、液晶タブレットとペンを用いてデジタルの皮膚に文様をほどこす。「文身」(イレズミ)が身体を世界から聖別するものであったように、現代のテクノロジーを通じて描かれる西脇の文様もまた、わたしたちに世界の裂け目を垣間見せる「わざ」である。

florian gadenne + miki okubo
《L’Arbre-Monde》(2024)より部分

florian gadenne + miki okubo |1987-, 1984-

ガデンと大久保は、わたしたちが自身を取り巻く世界との関係を新しく結び直すための糸口を模索する。非人間存在との関係を再考するブルーノ・ラトゥールの「モノの議会」や、技術の人間固有性から脱却するエマヌエーレ・コッチャの繭の理論、木々を見る慣習的な視点を覆すフランシス・アレの絵画論を参照しながら、エコロジー問題への対峙を軸に、日常を新しく生きる芸術的アプローチを追究する。その試みは、生態系の自生にかんする実験的な生物彫刻、生の関係性としての「食」をめぐる表現、生態系における複雑な関係性を多角的に再構成した絵画作品として展開されてきた。本展では木々の世界をめぐるインスタレーションに取り組み、わたしたちと非人間存在の「生の技術」を思考する。

GengoRaw(石橋友也+新倉健人)
《バベルのランドスケープ》(2023)

石橋友也 ISHIBASHI Tomoya |1990-

人類が1700年かけて愛玩用に造形してきた金魚を祖先であるフナの姿に戻すというチャレンジ、都市や森のランドスケープのなかに見出される言語の幾何学的パターンを人工知能によって再認するというアイディア、川で拾得した廃棄物から制作した顕微鏡を用いて川の有機的環境を覗き見るというアクション。石橋のアプローチは、わたしたち人間とそれを取り巻く環境との関係や、わたしたちが世界を生きる手段である技術について、思考を新たにするよう挑発する。品種改良によって作られた種は自然の一部たりうるのか、人工物と自然物のあいだに本質的な差異はあるのか、わたしたちが〈ものを作る〉とはいかなる営為なのかを問う。

 

IAMAS ARTIST FILE #10に関するお問い合わせ

岐阜県美術館
〒500‐8368 岐阜市宇佐4‐1‐22
TEL:058-271-1313/FAX:058-271-1315