展示室3
素材転生―Beyond the Material

2021年4月24日~6月20日

今世紀に入り、美術や工芸を取り巻く環境はますます多様化しています。工芸と美術は相互に深く交信することで、それまでの用途性から解放され、素材の在り方そのものを問う表現を生みだしていきました。美術系大学や専門学校で工芸を学んだ世代は戦後の美術をすでに歴史として受容し、工芸的素材や古来の技術を今に生かしてハイブリッドな作品を生み出しています。  
本展では、素材の特性から生まれる表現と、素材に必須なテクニック、付随する装飾性といった要素を根幹に制作に挑む作家8名を紹介します。素材をいつくしみ渾身の力を注ぐその創作性は、日本的特性でもあり国際的にも強い発信力をもっています。境界を往き来する表現はいつの時代にも新しく、刺激的です。彼らのパワフルでヴィヴィッドな表現をご堪能ください。

ご来館のみなさまへおねがい

岐阜県美術館では、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、安全に配慮した取り組みを行なっています。
・発熱、咳などの風邪症状がある方、体調がすぐれない方はご来館をお控えください。
・入館にあたり、マスクの持参・着用、こまめな手洗い・消毒、来館者同士の距離の確保にご協力ください。

>>新型コロナウイルス感染症対策について

開催概要

タイトル 素材転生―Beyond the Material
開催期間 2021年4月24日(土)~6月20日(日)
※4月24日(土)は10:30から開場
※5月21日(金)、6月18日(金)は夜間開館のため20:00まで開館
※展示室への入場は閉館30分前まで
観覧料 一般1000(900)円 大学生800(700)円、高校生以下無料
※()内は20名以上の団体料金
※身体障がい者手帳、療育手帳、精神障がい者保健福祉手帳、難病に関する医療費受給者証の交付を受けている方およびその付き添いの方(1名まで)は無料
会場 岐阜県美術館
主催 岐阜県美術館、中日新聞社
後援 NHK岐阜放送局
助成 公益財団法人田口福寿会

※感染症拡大防止対策のため、延期・中止する場合があります。

※新型コロナウイルス感染症対策のため、日時・内容を変更、または中止する場合がございます。

作家・作品紹介

林 茂樹 HAYASHI Shigeki(磁土・鋳込)

1972年岐阜県土岐市に生まれ静岡県立大学を卒業後、岐阜県立多治見工業高校専攻科でやきものを学ぶ。
磁器土を用い、鋳込みの技法により異次元の人物像を創る。膨大な数の型から精密にパーツが作られ組み上げられる。スペーススーツの赤ん坊や、バイクに跨る子供、羽の生えた少年など、ビスクドールのマットな肌に、陶磁器の釉薬ならではの艶やかな色が映える。素材の特性が彼の生み出す特異なフィギュアたちに瑞々しい命を吹き込んでいる。

富田美樹子 TOMITA Mikiko(磁土・色絵金彩)

1972年大阪府枚方市に生まれ、京都市立芸術大学陶磁器専攻卒。
鋳込みと手びねりで成形したボディの上に、万古焼の盛絵の技法に倣い、色絵と金彩の釉薬を一粒一粒盛り上げて加飾していく。繰り返しの作業の果て に創造される濃密な世界は、モスクやパゴダの装飾を連想させる。細胞のように増殖する点や曲線は、宗教的建造物のみならず、遺伝子から生まれる生物や植物、宇宙の法則などからも触発されている。

根本裕子 NEMOTO Yuko(陶)

1984年福島県に生まれ、東北芸術工科大学大学院陶芸領域を修了。
初期から陶による手びねりの技法で異形のものたちを創造してきた。福島と向き合い、近年は野良犬を造り続けている。彼らは群れを成し、皺が刻まれ、傷を背負ってしたたかに生きている。作者にとって陶は、痕跡を遺すことで生きるものへの畏怖とその尊厳を表し得る、不可欠な素材である。

宮田彩加 MIYATA Sayaka(刺繍)

1985年京都市に生まれ、京都造形芸術大学(現・京都芸 術大学)大学院染織領域を修了。
最初手刺繍から始めるが支持体を伴わない機械刺繍に移行することによって 糸は空間に足跡を刻むこととなる。平面に刺繍された動物や植物、骸骨はその本体から糸が伸び、別の作品とつながることで関係性を行き来させている。自身の頭部や腰椎のMRI画像を写し込んだ作品は宮田のライフワークであり、一つひとつ増えていくその軌跡は宮田の未来であり、同時に過去の自分へと向き合う時間でもある。

大貫仁美 ONUKI Hitomi(ガラス)

1987年千葉県に生まれ、武蔵野美術大学大学院工芸工業デザイン学科を修了。
ガラスのキャスト(型成形)の技法を用いて、我々の最も身近にある衣服(シャツや靴下、女性の下着)を型取り網目やレース、皺をガラスに写し取る。個々のパーツは、接着部分に金彩を施すことで、日本が古来、器の修復に用いた金継の技法になぞらえる。作者はそれらを「傷」と呼び、その記憶を修復することで次代へと自らを繋ぐ。

豊海健太 TOYOUMI Kenta(漆)

1988年大阪府に生まれ、金沢美術工芸大学大学院工芸領域漆芸分野で博士号を取得。
2020年から金沢卯辰山工芸工房に務める。漆黒の画面は鏡面のように研ぎ、磨き上げられることで周囲を写り込ませて自らの存在をなくしていく。"なま"なものから生まれ固化する漆と、命を生み出してその役割を終える卵殻は、生と死を同時にはらんでいる。それによって描かれるのは、増殖する細胞を孕んだ子宮や精子、骨盤、鹿の骨である。

塩見亮介 SHIOMI Ryosuke(鍛金)

1989年大阪に生まれ高校までを岐阜市で過ごす。東京藝術大学大学院鍛金専攻を修了。
学生の頃から鍛金による甲冑を作る。鍛金は銅や鉄、たがね真鍮を金槌で絞り、鏨で叩いて微妙な凹凸を刻んでいくことで、細部を作り上げていく技法である。鎧兜をまとう者たちの顔は猛獣や猛禽 類、髑髏であり、すべてが自己防衛であると同時に、弱い自分を覆い隠そうとする虚栄の象徴でもあるという。全てを自らの手により作り上げる長い工程のなかに、彼の強さが潜む。

ウチダリナ UCHIDA Lina(和紙)

1990年東京に生まれ、千葉で育つ。
東京藝術大学ではデザイン科に所属し、大学院では染織を専攻しつつも染めや織りをすはねることなく、和紙で制作をし続けてきた。蛾の翅は焼き色によって細かな模様が表現される。型に合わせて、薄い和紙をふのりで固めながら、骸骨や人体を作っていく。はかなげで危ういその虚像はしかし、リアルな蛾の存在によって、虚から実へと観る者を引きもどす。